Siesta

アラビアのロレンス/完全版のSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

映画史に燦然と輝く不朽の名作 ただ、長いことこの上ない 冒頭は真っ暗なままで数分音楽が流れ続けるし、映画の半分は砂漠を歩くシーンだと思う ただ、その景色の素晴らしさとロレンスの引き裂かれ方は普遍的な魅力を持っている 後年の作品に例えるのも変だけれど、ロレンスの政治的な引き裂かれ方は「もののけ姫」、精神的な引き裂かれ方は「ファイト・クラブ」とも重なる 宇多丸師匠がロレンスは女の子理論、精神的にはファイトクラブのエドワードノートンと言っていたのを聴いてから見たから、めちゃくちゃ合点がいった ただ、ロレンスの成り上がりと没落はバリーリンドンとも重なるが、個人的に作品としてはバリーリンドンの方が好きかな
有名なアリの登場シーン 砂漠の向こうから小さな姿が次第に大きくなり姿が見えてくると発泡 砂漠の地平の雄大さはCGがないからこその荘厳さと無慈悲さを放っている
ロレンスが想像を超えて、本来のキャパシティを超えて立場を得てマッチョになろうと、なっていく姿が痛々しくも苦しい そして、ロレンス女の子理論で見ていくと、途中で仲間を救いにいくのがめちゃくちゃディズニープリンセス感あって でも、成り上がるためにその彼を処刑しなければならなくなり ここがマッチョの決定打というか ゲリラ攻撃の砲台は海に向かってあるということを砲台の位置からゲリラ攻撃を見せる演出に痺れる 遠目の視点で攻撃シーンを見せるのはシンドラーのリストを思い出した スピルバーグ大好きらしいし
召使いと帰還して真っ先にレモネードを要求するところも好き ロレンスははっきり言って痛々しい組織にいたら困るタイプの奴なんだよなぁ さらに自分を大きく見せるため、さらに彼は本当に自分は特別な選ばれし者だと思い込む、思い込もうとすることで成果を上げていくが、一方でマッチョであることとパーソナリティの乖離もあり そして、鞭打ち、男色と思われる敵に遊ばれる 彼は結局、大物の器ではないというか、目が常に不安げで、この瞬間も強がりながらもヘタレが滲んでしまうのがね ここで、良くも悪くも自分の小ささに気づくというあたりも小さい男だなぁと さらに、ちょっと自身のパーソナリティに気づいてしまった部分もあったのかもしれないし そこからの配置転換の希望 この辺りからロレンスの走り方や表情、行動のフェミ感が加速している感はある それでも、やはり再び戦地に向かい、またしても戦果を上げる ただ、そのもたらしたものは、という虚しさ 仲間内で敵対し基本的な生活水準を維持できないアラブの仲間、過剰な攻撃と虐殺により、地獄絵図と化した病院 病院に彼が行き、自分の成し遂げたことの代償に愕然とする容赦のなさ 地元に帰るという褒美にも後ろめたさ、ひいて言えば自身の行いへの絶望と希死念慮もあったのかもしれない そして、冒頭のバイクによる死、葬儀での人々の様々なロレンス評に想いを馳せるという構造も見事 ただ、個人的にはもっとこの時代の歴史を知った上でまた挑戦してみたい
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