たまち

アラビアのロレンス/完全版のたまちのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ものすごいものを観てしまった…。T.E.Lowrenceの奇な人生、砂漠、人間、戦争、時代、全てを描き切ったようなこれは確かに叙事詩。

Intermissionで終わっていればどれだけ良かったか。
きついけれど、前後編の長い時間を使ってそれを描き切るのが昔の名作みがある。

・大好きなジーザスクライストストーリーと少し似ている。
栄光の渦中で大事な人が死んだり自分の中の暴力性に気づき自分は凡人、神の捨て駒なのだと思い詰める。いつも世間からの評価と自分の評価が一致しない。そばでそのギャップをうっすら感じ取るAliは戸惑うものの何もできない。周りに指さされる時こそ神性を発揮していく。

・クレジットやタイトルを映しながら黙々とバイクを整備する姿を上から映すお洒落な冒頭。

・アリの登場シーンがもの凄い残った。蜃気楼の向こうから黒い影。足元も見えず人なのかもわからない。カメラもずーーーっと撮っている。まだわからない。ようやく影がまとまってくる。人か?と少し安心したところで銃撃戦。砂漠では何もかもが脅威。

・圧巻のラクダたち。CGなんてない時代だよなあ、ラクダが戦闘に使うほど『走れる』とは知らなかった。アカバ戦の突撃が一番迫力があって、少し引きで観て雪崩のように迫りくる砂漠の民は恐怖でしかなかった。


・ロレンスがもの凄い。おそらく史実そうだったのだろうけれど掴みどころのない。
大胆な作戦を立てる。遂行する。残虐さを楽しんだと発言した。英国本部に戻ると打って変わって背を丸め自信なさげにささやくようにしゃべる。目立つことを嫌う。アラブではキリストになれたのに。
映画を観終わってもなお冒頭の葬式の誰が正しかったのかわからない。誰もが正しいのかもしれない。

・アリが、キャラクター的にももちろん見た目も好きだった。素直でロレンスに『好意』を感じつつ、そして破滅を予感しながらもその真意も伝え方がわからない。生き延びて、勉強して、国を治めていて欲しい。

・王子の真摯さ、強かさ、名言の多さ、流石の貫禄。これは事実も知りたくなった。


正直私には'Clean'とは思えないので行きたくはないが…とても砂漠を好きになる作品でもあった。切り立った岩山、灼けつく日差し、一粒も乱れのない地面。映像としてこれほど美しくドラマチック。ラクダに乗ってみたい。
たまち

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