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間違えられた男のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

間違えられた男(1956年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

本作も名作中の名作なのだろうが、真犯人を探すことに重きが置かれていない点で、今まで観てきたヒッチコック作品とは趣が異なる。本作は実話をもとに冤罪によって逮捕された男性とその家族の人生が壊れていく様を描きながら、警察に対する批判をしようとした映画らしい。

しかし、私が感じたのは警察に対する批判以上に、人間の脆さと危うさである。じぶんが犯した罪でなくても、周りに犯人扱いされているうちに心が壊れ、あたかもじぶんが犯人であるかのように思い込んでいく。一方で彼を犯人だと言い張る者たちの記憶はごく曖昧で、彼らの証言を鵜呑みにする人たちもたいへんに愚かである。

冒頭でヒッチコックも言っていたように、この世で最も恐ろしいのは作り物の映画などではなく、現実世界の出来事ひとつひとつだろう。人間こそ恐ろしさの極みと言っても過言では無いはずだ。そういう主張をしようとしたのであれば、本作は大いに成功を収めていると言って良いだろう。しかし、それが面白いかどうかはまた別の話だ。
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