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メアリー&マックスのemilyのレビュー・感想・評価

メアリー&マックス(2009年製作の映画)
4.0
ニューヨークに住む中年でアスペルガー症候群の男性と、メルボルンに住む孤独な少女メアリーはひょんな事から文通をはじめることになり、お互いの事を話、孤独を埋めあうようにその文通は20年来続いた・・・

 クレイ・アニメーションのぎこちない動きや”不完全”さが二人のそうして人間のそれと溶け合い、その温かみと独自のユーモアは生身の人間以上に愛着を感じ、安堵感を与える。

 グレートーンの色彩の中にその中に赤色がスパイス的に光輝く。それはまるで暗黒の中の一筋の光に見え、人と人のコミュニケーションや人が生きていく中で人と関わりを持つ事がどれだけ大事かを考えさせられる。クレイアニメのカタカタ動く不恰好さはキュートでありながら、その描写はシビアで冷めており、そこに独自のユーモアが練りこまれている。マックスは過食症、肥満体、鬱、アスペルガー症候群で人との距離が測れない。だからこそメアリーに出す手紙では素直な自分をさらけ出すことができ、そのまっすぐさが前面ににじみ出ており、そこをいとおしく感じてしまう。一方のメアリーはキッチンドランカーで万引き常習犯の母親、顔にあざがある悩みなどから孤独な日々を過ごしているが、マックスと出会う事により、彼の心の病を治したいと勉学に励む事になるのだ。

 20年来の文通、きっとそれは会うことがなく、年齢が離れていたから成り立ったのかもしれない。会うことはないと思っているから自分をさらけだせたのかもしれない。過酷な人生の中にやはり自分の内をさらけ出せる人は必要だ。すべてが重なる必要なんてないのだ。ただほんの少し自分と重なりあう部分があれば、それで救われる事はある。普遍的なテーマでありながらしっかり毒気がありクレイアニメの不完全さを人間のそれと重なり合わせることで、メッセージ性はさらに高まり心にじんわりとあったかい物を残してくれる。どんな過酷な人生であれ、分かち合える友達が居れば人は乗り越えられなくても、生きていくことが出来るのだ。
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