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パリ警視庁 事件137
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パリ警視庁 事件137

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『パリ警視庁 事件137』に投稿された感想・評価

Omizu
3.7
【第78回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品】
『12日の殺人』ドミニク・モル監督の新作。カンヌ映画祭コンペに出品された。

面白かった。黄色いベスト運動に参加した少年が警察に頭を撃たれる。その捜査をする女性捜査官を描いたサスペンス。レア・ドゥルケールの抑えた演技が素晴らしい。

2018年、労働者たちによる黄色いベスト運動中に起きた事件の全容が浮かび上がってくる過程をじっくりと見せていく。

警察の警察として働くステファニーは誰が撃ったのかまで突き止めるが不起訴に。保守的な警察という組織を暴こうとするモルの視線は流石だ。

『悪なき殺人』や『12日の殺人』の延長にありながら、暴力を違う角度で描いている。モルらしいエンタメ性を封印して徹底してリアルに描写しているのがいい。

移民の立場、労働者と警察の不均衡な力関係という社会問題を淡々と、じっくりと描き出している。

モルにしては地味な作品ではあるが、見応えがあるしフランス社会を端的に捉えた作品としてよかった。
2018年11月にフランスで始まった大規模な反政府・抗議デモ「黄色いベスト運動」を背景にした社会派サスペンス。
監督はドミニク・モル。
原題/Dossier 137
(2025、1時間57分)

2018年12月、パリ。
市民の抗議デモ“黄色いベスト運動”の取り締まりに当たった警官がゴム弾を放ち、20歳の若者が頭を撃たれ重症を追う。
フランス国家警察“IGPN(監察局)”のベルトラン警視(レア・ドリュッケール)は、混乱する現場の記録映像を調べ、正当防衛を超えて銃を発砲したと思われる警官グループを拘束し、事情聴取を開始する…。

①ドキュメンタリー・タッチの作風とレア・ドリュッケールの抑制された演技が効いていて、見ごたえがある。
②組織や仲間への忠誠と被害者への正義との葛藤、
権力の闇と法律の限界、
といった視点が取り入れられている。
③(独り言)
・権力は不都合な真実を隠蔽する。
・権力側の暴力は法律によって正当化される。あるいは、法律という形をとる。
・国家権力を批判的に見る目を奪われた国民は、いつの間にか自分の自由や人権が失われていることに気づくだろう。
それでも、お上を信じ、すがり、崇拝し続ける。
日本人が軍国主義に踊らされた昭和の時代。
排他的同調主義と国家ナショナリズムがどのような結果をもたらしたかは歴史が証明しているとおり。
権力を監視し縛る地道な活動の積み重ねでしか民主主義は育たない。
何が正しいのか、"ホンモノ"を見る目を養いたい。
④(ある人物の話)
社会や人々の役に役に立つ仕事をしたい。そんな理想を持って社会的貢献度の高いと言われている会社に入った若者は、やがて、組織の実態も見えてくる。そして、組織が掲げるたいそうな方針と実際の事務処理との乖離から、この仕事は本当に人のためになっているのだろうかと悩むようになる。本当はそんなに立派な仕事ではないと分かっても辞められず、仕事熱心な彼は自分の心をごまかしながら、一生懸命仕事をするが、情緒が不安定になり、孤立感を深める。
そして、定年を迎え、ようやく偽善的な苦しさから解放される。
早めに転職すべきだったという思いは今更ながら残るが、それも人生、よいこともあったと割り切るしかない。

~登場人物~
1️⃣フランス国家警察総監察署(IGPN:Inspection générale de la Police nationale)→通称"警察の警察"(La police des polices)
・ステファニー・ベルトラン警視(レア・ドリュッケール):調査官。主人公。
・調査官、ブノワ・ゲリーニ(ジョナサン・ターンブル):チーム・メンバー
・調査官、キャロル・デラルー(マチルデ・レーリヒ):チーム・メンバー。
・コミセール(警視正)、マダム・ジャリー(フローランス・ヴィアラ←コメディ・フランセーズ)
・局長、マダム・ニコレット (エレーヌ・アレクサンドリディス)

2️⃣ステファニーの家族
・息子、ヴィクトール(ソラン・マチャド=グラナー):別れた夫との子。
・別れた夫、ジェレミー(スタニスラス・メルハール)
・元夫の現パートナー、エリー(アントニア・ブレシ):ジェレミーの現在のパートナー
・母シルヴィ(ジュヌヴエーヴ・ムニック)
・父ジェラール(クリスチャン・シニエ)

3️⃣ジラール家
・母親、ジョエル・ジラール(サンドラ・コロンボ)
・次男、ギヨーム・ジラール(コム・ペロネ):警官に頭を撃たれた被害者。
・娘、ソニア・ジラール(マティルド・リウ)
・ソニアの恋人、レミ・コルディエ(ヴァランタン・カンパーニュ)
・長男、アントナン・ジラール(ヤニック・モルゼール)

4️⃣ホテル
・アリシア・マディ(ガスラギー・マランダ):清掃係

5️⃣ 国家国介入部=国家警察の犯罪捜査・特殊部隊(BRI:Brigade de recherche et d'intervention)、通称"アンティ・ガング"(anti-gang)。
・コミッセール(スティーヴ・ドリーセン)
・アルノー・ラヴァレー(テオ・コスタ=マリーニ)
・ミカエル・ファージュ(テオ・ナバロ=マッシー)
・ミシェル・ブルザンスキ(ガブリエル・アルメール)
・クレモン・ガルシア(アレクサンドル・オーヴェルニュ)
・セバスチャン・ジャケ(マルク・ラミジャン)

「皆が頭を使わず民主主義が消えた頃、"子猫を見すぎたか"と自問する。」

「黒人やアラブ人でなく白人が暴行を受けたら急に騒ぎ出す。郊外の事件でも対応した?
ー有罪の件数は?誰も警察に逆らえない。
懲戒免職者は?何人?
ゼロ?ほらね。
―なにも変わらない。」

「監察局の孤立は許されない。警察総局と内務省の意向よ。」

「立派に仕事をしたって、それが何になる?意味があるの?」

「彼らのことを憎まず前向きでいようと思います。でも、難しいです。」
["警察の警察"の見えない戦い、或いはネコ動画] 70点

2025年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ドミニク・モル長編八作目、2005年の『レミング』以来20年ぶりのコンペ選出。カンヌはマイウェン『パリ警視庁:未成年保護部隊』やアルノー・デプレシャン『ルーベ、嘆きの光』のような警察お仕事映画が大好きなので、"警察の警察"と呼ばれる国家警察総監部(IGPN)の仕事風景を描いた本作品が選出されるのは驚かない。奇しくも主演レア・ドリュッケルは同じカンヌ映画祭に出品されたローラ・ワンデル『Adam's Sake』でも看護師を演じており、お仕事映画が渋滞している。物語は実際の出来事を基にしたフィクションであり、2018年12月の黄色ベスト運動の最中に、ライオットガンの銃撃によって大怪我を負った少年の案件(原題"事例137"はこの事件の書類番号)を描いている。少年は主人公ステファニーと同じ故郷だったため、彼女は親近感を持ってこの事件に接している。事件の当事者である少年やその家族、及び当日に展開していた部隊の責任者たちへの聴取、監視カメラの映像請求などかなり具体的な仕事内容を淡々とこなしつつ、"警察の警察"として警察官に嫌われ、一般人からすると憎き警察を同じなので警察官として侮辱されるという現実、主人公も少年も白人であることと目撃者となった黒人女性の怒りや恐怖、被害にあった少年の近くにいた姉の恋人には10分で一瞬で有罪判決が出たのにIGPNの捜査には数ヶ月単位でかかるという格差や同僚を公平に調べる捜査の難しさなど、様々な側面で社会と警察とIGPNの微妙な距離感を描き出そうとしている。この塩梅と緩急の付け方が実に上手い。あと、ステファニーの祖母が猫動画見て"全人類がこれ見てたら平和なのに"と呟き、それに祖父が"現在でもたくさんの人が猫動画を見ているが状況は悪くなる一方だし、そういうの見て思考を止めてしまっている"と鋭い指摘をしていた。猫動画へのオーバーな賛辞として日本でもよく言われるコメントがフランスでも言われてるのか。

ちなみに、私服部隊として警備に参加していた隊員ファジェ役で出演しているThéo Navarro-Mussyが三人の女性から性的暴行で訴えられているとして、映画祭が出禁にしたらしい。マイウェンの暴行騒動やら、カトリーヌ・コルシニのパワハラ騒動やら、身内に甘いカンヌだが、流石に見逃せなかったか。

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