フィリオは2023年に、1970年代から暮らしている故郷レシフェについてのドキュメンタリー『Pictures of Ghosts』を発表している。三部構成になっており、第一部はフィリオの実家がある地域について、第二部と第三部はレシフェのダウンタウンと映画館について描いている。映画として面白いのは第一部なのだが、まさか歴史の授業みたいだった第二部や第三部が重要になってくるとは思わず驚いた。祖父アレクサンドルが働いているのは、現在でも営業しているレジェンド映画館だったし、腐敗した地元警察がその差別主義をゴリゴリに見せつけてくるウド・キアとのシーンでも、警察は彼が逃亡ナチス関係者と思って称賛していて、そういえば二次大戦中に親ナチだったブラジルにプロパガンダ用の映画館をナチスが建てた話があったなと。『アクエリアス』の主演だったブラジルを代表する大女優ソニア・ブラガの代表作『未亡人ドナ・フロールの理想的再婚生活』も本作品の中で新作として上映されていた(重要なのは『JAWS』の方だが)。そして、アルマンドがエリザと面会したシーンでの夜景は、そのまま『Pictures of Ghosts』にも登場していた気がする。それらは引っ越してきた直後の幼いフィリオ少年が見ていた景色であり、その裏で彼の世代のために戦っていた大人たちがいたということを描いている。本作品は、自由を、研究を、未来を守るための激烈な戦いの鮮やかで血みどろの記録なのだ。