そのじつ

西遊記のそのじつのレビュー・感想・評価

西遊記(1960年製作の映画)
5.0
自分のアニメーションの原体験。今は流行らないネットリした動きのフルアニメーション。これは手塚治虫の作った長編アニメ映画で、彼のアニメーション原体験のディズニー映画の片鱗が感じられるのかもしれない。

銀河のきらめきの中に神様たちがおわす様、金閣銀閣の線対称の動き、女性のシナなど手塚治虫的表現が随所に見られてファンにはたまらない。
それら手塚の表現を見事にアニメーションに仕立て上げた森康二の偉業も惜しみなく讃えるぞ。猿の顔をあんなに表情ゆたかに表現できるひとはそういない。そして彼の動きには品がある。本当に美しい。現代的な写実とは違う、歌舞伎など伝統芸能を感じさせる洗練された無駄のない動きだ。
リンリンのしなしなとした女性らしい動き。首の動き目の動きを流れるようなコンビネーションで描き、情緒を醸し出す凄技。生まれたばかりの石猿がキョロキョロ・アタフタと動き回る様子の自然でありつつ面白みを盛り込んだ動き。これ見よがしのスパーテクじゃないところに桁違いの実力を感じる。私にとって彼は永遠のレジェンドオブアニメーターだ。

シナリオの方では悟空の成長を見守る形で、やさしくけなげな恋人が悟空を精神面で支える。子ども達はあるいは母の姿を重ね、胸を締め付けられるような気持ちを悟空と共有できるだろう。リンリンのテーマの切なくあまいメロディがエモーショナルに盛り立てる。

音楽も素晴らしく、沙悟浄のテーマのマンボ風リズムも、旅の仲間の歌も大好き。
そのじつ

そのじつ