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ビッグ・リボウスキのtanayukiのレビュー・感想・評価

ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)
4.1
ゆるい、だるい、だらしない。敵も味方も善人も悪人もそんな区別にはたいした意味はなく、出てくる男たちが全員揃いも揃って隙だらけ、というどこまでいってもしまりのない脱力系の物語。だけど、あまりにゆるすぎて腹は立たないし、最後は、ここまできたらしょうがない、笑ってやるかと思わせられてしまう、不思議な魅力をたたえた作品となっている。

コーエン兄弟の笑いって、ニヤニヤ笑えるギリギリのラインを攻めていて、ちょっとでもやりすぎるとスベッてしまって、それこそしまりのない話になってしまうと思うのだけど、ビッグ・リボウスキはたぶん、そのラインを意図的にちょっと踏み越えたところでつくっているのではないか。どこまでやったら許されるのか、というよりむしろ、どこまでならついて来れるのか、観客が試されているのかもしれない。個人的には、マリファナでラリって、あるいはドラッグを盛られて飛んでたときの幻覚シーンは、ちょっとやりすぎかなあと感じたけど、あれも許容範囲だという人は多いんだろうか。

ホワイトルシアンとマリファナに首まで浸かり、無職で怠惰な日々を送るデュード。だが、仲間3人でトーナメントにも参加しているボウリングの練習だけは欠かさない。そんな彼が、ひょんなことから誘拐事件に巻き込まれてしまう。自宅に何度も人違いした悪漢たちに押し入られ、行く先々でひどい目にあい、車はどんどんポンコツになり、本人もボロボロのはずなんだけど、デュードは全然おかまいなし。瞬間湯沸かし器のウォルターにはさんざん迷惑をかけられて、一度はブチ切れたものの、すぐに「ボウリングの練習には行くから」と、その怒りは持続しない。

ちょうどいま、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ・シリーズを、オーディブルで頭から順番に聞いているところだったので、この映画で描かれている雰囲気やストーリーラインがぴたりと重なってビックリしてたら、コーエン兄弟自身が、この作品へのチャンドラーの影響を認めていると知って、二度ビックリ。『ロング・グッドバイ』を聴き終えたら、久々にアルトマン監督の『ロング・グッドバイ』を見てみよう。

→ https://ja.wikipedia.org/wiki/ビッグ・リボウスキ

△2022/09/19 Apple TV鑑賞。スコア4.1
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