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デューン 砂の惑星PART2のtanayukiのネタバレレビュー・内容・結末

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とハンス・ジマーが生み出す至福の映像&音楽体験。言葉はいらない。全身で味わってほしい。以上。

というわけで、あとはすべて余録というか自分用の備忘録です。

砂の惑星アラミス(別名デューン)の砂漠の民フレメンがシャイイ・フルドと呼んで崇めるサンドワームはその成長過程で、抗老化(アンチエイジング)とさまざまな超能力を発現させる唯一無二のスパイス、 メランジを生み出す。女子修道会ベネ・ゲセリットの超能力も、母系のすべての先祖の記憶をもつベネ・ゲセリットの教母も、スペース・ギルドの超光速恒星間移動を可能にする能力も、メランジの摂取によるものなので、アラミスを支配下に置くことは、全宇宙を支配下に置くこととイコールだった。

皇帝シャダム4世が長年アラミスを支配下におき、スパイス貿易で巨額の利益を得ていたハルコンネン男爵家にかわって、アトレイデス公爵家にアラミスの管理を命じたのは、アトレイデス公爵家を陥れるための罠で、皇帝は虎の子のサルダウカー部隊をハルコンネン家に貸与して、アトレイデス公爵家の殲滅をはかる。レト公爵と主だった家臣たちは、ハルコンネン+皇帝連合軍の急襲によって命を落とすが、嫡男ポールとその母レディ・ジェシカは難を逃れてフレメンと行動をともにする。

フレメンが伝説の救世主(それは歴史上、砂漠の国に相次いで登場した宗教指導者を思わせる)を待ち望む信仰をもっていたのは、ベネ・ゲセリットの深慮遠謀のためだったが、メランジに身をさらした(命の水を飲むこともメランジを摂取することと同じ?)ポールは、過去・現在・未来の記憶をもつに至って、自らの運命を知る。レディ・ジェシカは、本人も知らされていなかったが、ハルコンネン男爵の娘だった。つまり、優生学のように血統を操作して超人類の誕生を目論むのがベネ・ゲセリットの真の狙いなのだ。さらに、レディ・ジェシカの胎内に宿る妹アリア(ノンクレジットだったけど、アニャ・テイラー=ジョイだったね)が大人になった姿も見る。彼女は水で満たされたアラキスにいた。アラキスは砂の惑星から緑の惑星に変わる運命にあるということだ。

ポール(フレメン名ムアディブ)はたしかにフレメンのリーダーになる運命だったが、救世主といってもその歩む道は決して平坦なものではなく、戦につぐ戦、破壊につぐ破壊を経なければ、フレメンに未来はない。フレメンがハルコンネン家+皇帝の圧政からアラミスを取り戻し、緑の惑星に変えるには、戦いに勝利するしかないというわけだ。彼らを地獄のような戦いへと駆り立てる覚悟を決めたポールは、自ら「リサン・アル・ガイブ(ベネ・ゲセリットが偽造した伝説の救世主)」と名乗って、フレメンたちの頂点に立つ。それはあたかも、能力を開花させて覚醒した鉄雄が春木屋で屹立するシーンを思わせる。

ポールはフレメンを率い、サンドワームを操って亡き父の弔い合戦を仕掛け、ハルコンネン家+皇帝を打ち負かす。そのうえで皇帝の座を要求する、皇帝の娘イルランと結婚するという条件で。刃をつきつけられた皇帝はその提案を渋々受け容れるが、混乱に乗じてアラミスの上空に現れた大公家連合?はポールの皇位継承を拒否する。ポールは艦隊攻撃を命じ、フレメン軍は聖戦を始めるために空へと飛び立つ。

だが、目の前でポールに裏切られたフレメンの恋人チャニは、ただ一人、戦闘には参加せず、その場を立ち去る。これは自分の想像だが、彼女はポールの子を宿しているのではないか。自分の運命を受け入れ、闇落ちしたかに見えるポールと、同じく公爵家と男爵家の両方の血を受け継いだ妹アリア、そしてチャニとポールの息子の3人の運命が、次なる物語で交差すると見たが、どうだろうか。

ところで、数千年後の未来を描いたとされるDUNEの世界にはコンピュータが出てこないのだけど、それはコンピュータに対する反動から、いかなる「思考機械(いまの言葉でいうならAIだろう)」をつくっても所持しても即死刑という設定があるからだということを今回はじめて知った。それって、AIがシンギュラリティを迎えて、なんらかのディストピアが到来した歴史があったということだろうか。原作が出版されたのが1965年、作者のフランク・ハーバートが亡くなったのが1986年であるということを考えると、恐るべき先見性だ。

△2024/03/17 109シネマズ二子玉川IMAXレーザー鑑賞。スコア4.7
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