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アイ・オリジンズのtanayukiのレビュー・感想・評価

アイ・オリジンズ(2014年製作の映画)
4.3
少し前に、Audibleで遠藤周作『深い河』を聴いていたとき、輪廻転生したはずの亡き妻を探してインドを訪れる磯辺の物語は、この映画を彷彿させるなあと思って見返したまま、感想を書くのを忘れてた。

博士課程で「目の進化」について研究していたイアンは、人の瞳の写真をコレクションしていた。ハロウィーンパーティーで「別の惑星から来た」とうそぶく目出し帽姿の不思議な女と出会い、お互いに気分が盛り上がってことに及ぶが、その女は名前も言わずに立ち去ってしまった、瞳の写真だけを残して。その夜の出来事がどうしても忘れられないイアンは、彼女の瞳の写真を何度も見返す。ある日、くり返し現れる「11」の数字に導かれるようにバスに乗り、降りた先で印象的な「瞳の看板広告」を目にする。この瞳は……彼女の瞳だ! 広告からたどって瞳のモデルがソフィ・エリゾンドというモデルだと知ったイアンは、彼女がネットにあげていた写真から彼女の行きつけのカフェを見つけ(ネットの特定班かよw)、ついに電車の中で彼女との再会を果たす。

スピリチュアルでふわふわしたソフィと、根っから合理的なサイエンティストのイアンは本来、水と油のはずだが、なぜか2人の息はピッタリで、すぐに2人は深く愛し合うようになる。結婚するつもりで役所に出向くが、24時間後でないと受け付けられないと言われ、しかたなく帰途につく。助手のカレンからの電話で研究室に向かったイアンは、誤ってホルムアルデヒドを目にかけてしまう。カレンの応急処置で大事にはいたらずにすんだが、イアンは一時的に目隠し状態に。そのままソフィと家路につくが、建物の古いエレベーターが途中で停まってしまう。イアンは先に壁をよじ登り、エレベーターのドアをこじあけ、ソフィを引っぱり上げるが、その途中でエレベーターが落下。ソフィの下半身は切断され、目の前で息を引き取ってしまう。

自暴自棄に陥ったイアンに救いの手を差し伸べたのはカレンだった。7年後、イアンは目の進化についての画期的な研究を成し遂げ、妻のカレンは妊娠していた。赤ん坊が生まれると、虹彩認証データベースに登録するため、虹彩スキャンがおこなわれる。ところが、その虹彩は見知らぬおじさん、ポール・エドガー・デアリーのものだとデータベースが返してきた。虹彩は完全に固有のものであり、生涯変わらず、一卵性双生児であっても同じパターンを取ることはないとされる(だからこそ、指紋や静脈と同じく、個人識別のための生体認証に利用されている)。なのに、他人と同じということがあり得るのか? だとしたら、それはいったいどういうことなのか?

輪廻転生にまつわる逸話は昔からあって、どこどこに生まれた子が、遠く離れた見ず知らずの他人の記憶を語り始めた、という記録がいくつも残されている。だが、それはあくまで、本人がそう言っているだけの話であり、その正誤を判別するのはきわめてむずかしい。だが、もし虹彩という明らかな証拠があったとしたら……。他人の空似だけではすまないのではないか?

イアンは、亡くなったソフィの虹彩をデータベースで検索してみる誘惑に勝てなかった。そして、つい最近、虹彩スキャン登録されたインド人の少女がヒットする。彼女はソフィの生まれ変わりなのか。イアンは真実を確かめるために、インドへ飛ぶ。インドの少女サロミナの捜索は難航を極めた。だが、イアンはやがて、自分とソフィを結びつけてくれたのと同じやり方をすることを思いつく。「瞳の看板広告」を出すことにしたのだ。

ついにサロミナが見つかった。イアンは、サロミナにソフィの記憶が残っていないか、テストする。だが、その結果は芳しいものではなかった。しかし、あることをきっかけに、サロミナにはたしかにソフィの魂が宿っているとイアンは確信する。それがあまりに劇的で、あまりに悲しく、涙がどっと溢れ出す。

そういえば、ソフィは2人が出会った初日にこう言っていた。

「クジャクは一瞬で永遠を生き抜く鳥なの。愛と怒り、恐れ、喜び、悲しみを抱きしめて歌うわ。気高い歌声に凝縮してね」
「クジャクは運命の人に出会った瞬間、幸せと悲しみを感じる。彼にとっては始まりだけど、彼女には終わりが見えているの」

ソフィには最初からわかっていた。それでもイアンを選んだのだ。今度はイアンが返す番だ。ソフィの生まれ変わりであるサロミナに。

△2024/01/20 Apple TV鑑賞。スコア4.3
△2016/08/27 iTunes登録。スコア4.0
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