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ふたりの5つの分かれ路のakrutmのレビュー・感想・評価

ふたりの5つの分かれ路(2004年製作の映画)
4.0
ある夫婦の出会いから別れまでの5つの時点での出来事を、時間を遡る形で描いた、フランソワ・オゾン監督の恋愛映画。

離婚が成立したばかりの夫婦のホテル一室でのシーンを最初に、倦怠期、出産、結婚、出会いが描かれている。時間を遡って描くというスタイルは新鮮で興味深い。フランソワ・オゾン監督によると、時間を遡って描くというアイデアはジェーン・カンピオンの映画『Two Friends』がもとになっているらしい。時間順か逆順かに関わらず、同じ俳優が複数の異なる年齢を自然に演じるのは(特に女性は)なかなか大変かもしれないが、本作のヴァレリア・ブルーニ・テデスキは若返っていく主人公を上手く演じていて、不自然さは感じられない。

時間を遡ることで、ある時点での二人の関係性の原因が次に明かされる(つまり、A→B→CのCを最初に見せて、次にBを描き、最後にCを描く)という構造になるが、本作ではそれらの関係性はほとんど明示的に描かれない。それでも、鑑賞者がその部分を自由に解釈することができるくらいの暗示はされているので、あとは想像を働かすということになるだろう。全体的には、途中で挿入されるカンツォーネ風の楽曲の明るさに反比例して、微妙なすれ違いが続く二人の関係性はもの悲しいままである。出会いのシーンがこんなに悲しく見える映画はなかなかないであろう。
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