Kuuta

暁の出撃のKuutaのレビュー・感想・評価

暁の出撃(1954年製作の映画)
4.1
多くの人に勧めたい傑作でした!復刻DVDの高騰にも納得。

第二次大戦のイギリス軍のダム破壊作戦をベースにした戦争映画。スターウォーズのデススター攻撃の元ネタとして有名。

「視界の悪い夜間に低空飛行しながら数十センチの誤差の範囲で水面に爆弾を投下、全ての魚雷対策の網を水切り石のようにバウンドして飛び越えた爆弾がダムに衝突後、水中の程よい深さで爆発すれば」ダムは崩れるという理論を、本当に成功させてしまった頭のおかしい実話。

テンポの良い人間パート、本物の爆撃機の飛行を捉えた美しい撮影、対空砲火に耐えながら目標に近づく編集。エンタメ性と映像美が高いレベルで両立している。

冒頭30分は研究者が実験を重ね、作戦の承認を得るパート(本当にデカいセットを作って実験しているのが素晴らしい)。続く30分は技術者の照準器の改良や、部隊の訓練パート。ここでキャラクターに深みが増す。後半の1時間が作戦実行とエピローグ。シンプルな構成だ。

人間ドラマに無駄がない。爆弾の形状を研究するため、試験場の湖に入って黙々と試作品の欠片を拾い集める研究者。パイロットは仲間が撃墜されても泣き叫ばないし、爆撃失敗の連絡に将校は無言で悔しがる。それぞれが感情を押さえながらプロの仕事をしている。

水面や地面スレスレを飛ぶ爆撃機を等速で捉えた撮影がとにかくカッコいい。低空飛行でのパイロット視点の恐怖感にも驚く。コックピットから見える外の映像をはめ込んだものだが、本当に山や地面にぶつかりそうなスピード感があった。

ダムにたどり着いた時の「あんな大きな物が壊せるのか」という絶望感。それでも攻撃を仕掛ける直前、隊長が各機に声を掛ける場面は完全にルークだった。攻撃目標を見る主観→パイロットの顔の切り返しの連発で、刻一刻と前進する緊迫感を演出。ルーカス編集の原点でもある、という感動もあった。

ナチスのダム=デススターという事で、改めてあの魅力的な帝国軍はナチスのメタファーなんだと認識させられる。
民間人を巻き込むダムの攻撃は、現在では戦争犯罪だが、今作でも決壊したダムの水が下流に広がっていくシーンはかなり後味が悪い。この映画は、作戦の成功にも無言でベッドに倒れ込む隊員など、かなり抑えたテンションのエピローグを持ってきており、そのバランス感も好感を持った。

「フォースの覚醒」のポー率いるXウイング部隊が湖の上を飛んでくる場面も、今作のオマージュである。結局あそこが新三部作の盛り上がりのピークだった私的には、暁の出撃観とけば十分では?という気持ちも湧いてしまった。82点。
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