黒川

グエムル -漢江の怪物-の黒川のレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.8
期待してたんですけどめっちゃよかった。モンスターパニックとしても秀逸だしヒューマンドラマとか社会風刺としても良い。

研究所で大量のホルムアルデヒドをそのまま下水に流したことから始まるモンスターパニック映画。
まあグエムルという怪物が韓国社会の腐敗や闇そ具現化していたりするのでしょう。韓国事情わかんないけど。でもその事情がわからない外国人でも買収や収賄が日常茶飯事で、朴一家のようにトレーラーでひっそりと営む小売店が店舗県自宅のような人もいれば、大卒フリーターの次男の先輩のように高給取りの大きなビルに勤める者(いわゆる格差社会)もいるということがわかる構成になっている。怪物の出現で社会格差や歪んだ構造を炙り出すのはよくある手法ではあるが、映像のダイナミズムとプロットの緩急が素晴らしい。
社会格差もテーマなのだが、それ以上に家族愛の物語でもある。韓国の家族観は結構独特で、生死観も若干違う。泣き女の風習について聞いたことがあったが、あちらでは感情をあらわにするのが美徳なのだろう。グエムルの犠牲者の遺影の前で泣き喚く家族をこぞって撮影するマスコミを見るに、どこでも被害者をより悲劇的に撮り印象を残したいのだろう。「はずみでできた」孫娘のために全財産を投げ出すアボジ。叔父も叔母も一丸となり娘を探す。家に戻り食卓を囲む中に見る娘の幻覚。そこまで大事なの存在が家族なのだろう。デキ婚だったのだろうか、13年前に娘を置いて妻は出て行き、それ以来年老いた父と小さな小売店を営みながら彼女を育ててきた主人公。大卒だがフリーターの弟とアーチェリー選手の妹(銅メダリスト)の家族が、怪物という理不尽なものに奪われた少女を必死になって取り戻そうとするその過程に引き込まれる。少女はどこにいるのか。誰も話を聞いてくれない中家族だけで必死にもがくその姿は普遍的で、でもそれが怪獣によるものであるのがどこか不格好で、だからこそカッコいい。なんの話だ。

とりあえず他のポン・ジュノ作品もチェックしたいところです。
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