ぴのした

キツツキと雨のぴのしたのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.9
すごくよかった…!沖田監督らしく全体的に派手な話ではないけど、笑えるし泣けるし、登場人物の心情の変化が伝わってくるすごくいい映画…。

舞台は岐阜の山奥の村。役所広司演じる木こりの克彦は、山で映画を撮影するクルーに出会う。撮影の手伝いをするうちに仲良くなった、自信がなくスタッフにも舐められている若い監督、幸一(小栗旬)と克彦を取り巻く物語。

2人の関係は親子のそれのよう。

最初は幸一をバカにしていた克彦も、幸一の書いた台本に惹かれたり、撮影に参加させてもらって映画作りの面白さを感じたりするうちに幸一を認めていくようになる。幸一もはじめは克彦と距離を置いていたが、自分を認めてくれ、ときには助けてくれる克彦の存在に、次第に自分に自信がついていき、映画を引っ張っていけるようになる。

その2人の変化の過程がすごくグッとくるし、映画の撮影が進むにつれて村人や役者との絡みも増えて、面白おかしく物語が展開していくのも心地いい。

結果的に幸一は一人前の映画監督として自信を持ち、克彦も実の息子とうまくやっていけるようになるんだけど、それがタイトルの中の「雨」が上がるっていうのとうまくかけてあるみたい。

幸一が大俳優にも臆せずNGを出し続けた結果、大俳優に認められるシーンや、克彦の実の息子が、親戚に仕事を継いだらいいと言われたときに「こいつの気持ちもあるだろうが」と声を荒げるシーンはグッときた。

この2つのシーン、克彦と幸一の2人が仲良くなるまでは絶対起こり得なかったわけで、人の感情というか心情の変化が顕著に現れるシーンだと思うんだけど、こういうシーンをお涙頂戴的に誇張せず、だけどすごく魅力的に見せてくるのが沖田映画のすごいところだと改めて思った。