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ナイアガラのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ナイアガラ(1953年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ナイヤガラ瀑布の近くにあるホテルに、朝鮮戦線から疲労して帰って来たジョージが、妻ロースと一緒に泊まっていた。ローズは最近、他の男ができて夫によそよそしく、世間の人に夫が発狂していると思わせようとしていた。そのホテルに泊まりに来た新婚夫婦レイと妻のポリイは、ローズと若い男の密会を目撃してしまう…。

マリリン・モンローといえば、無知で可愛い女性の役が印象強いが、本作は彼女唯一の悪女役。
不貞を働く若く美しい人妻が、恋人を使って夫の殺人を企てる…というサスペンス・スリラーの佳作。
モンロー・ウォークを初披露し、その名を印象づけた代表的作品だ。

ストーリーはモンロー演じる妻の夫殺害計画に、新婚旅行の夫婦が巻き込まれてしまうヒッチコック風のサスペンス。
しかし、若い男と共謀して夫を殺す計画が、返り討ちに会い破綻。
死体となったのは若い男の方。
ローズは夫の復讐を恐れて逃げ出すが失敗し、夫に絞殺されてしまうのである。

何と言っても、本作が映画史に名を残すことになったのは、モンローのファム・ファタール(運命の女)ぶりのおかげだ。
嫌でも男を惑わす淫らな紅い唇と、豊満な身体の線を浮き上がらせるドレス。
男を誘惑するかのようにKissという歌を気だるく、ふしだらに歌う姿。
そして、お尻を過剰に左右に振って歩くモンロー・ウォーク。

貞淑な妻とは無縁なその姿は、女の武器を最大限に使って男を惑わせ、人生を破滅へと向かわせるだけの危険な美しさと魅力に溢れている。
まさに、ローズという名前の通り、その美しさで人を惹きつける一方、触れる者を棘で傷つけてしまう悪女そのもの。

夫のジョージは、その危険な魅力の虜であり、妻を殺した後悔で自暴自棄になった上、ナイアガラの瀑布に飲み込まれて身を滅ぼすことになる。
愛が壊れてしまった夫婦の激しく揺れ動いた心が、豪快なナイアガラ瀑布の流れと重なり、堕ちていく虚しさは印象深い。

しかし残念ながら、物語はモンロー演じる妻の死後は、画面に華が無く、サスペンスも面白味に欠ける。
悪役がクライマックスを待たずに退場するのだから当然なのだが。
また、新婚夫婦のレイとポリイは、単に偶然その場に居合わせるだけで、結局その役割はエキストラと変わりない。

モンローは本作以外では、根っからの悪女を演じることはなかった。
コメディにおいて、可愛いらしく明るいイメージで人気を決定的にして行くのは周知の通りだが、だからこそ、可愛い女の対極にある本作の悪女ぶりが忘れ難い作品となっている。
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