竜平

マイレージ、マイライフの竜平のレビュー・感想・評価

マイレージ、マイライフ(2009年製作の映画)
4.8
雇用主に代わって職員に解雇を言い渡すという仕事でアメリカ国内を年中飛び回っている男が、家族や職場の環境の変化の中でやがて自身の人生を見つめ直していく、という感じの話。

ジョージ・クルーニー演じる主人公ライアンは規則的且つ合理的に仕事をバリバリこなし、深い人間関係など持たず独り身を謳歌し、また自分以外の人を羨ましく思うこともない。非常に潔い生き方をしてるし、観客側からしたらそれが少し羨ましくも映る。そんな彼を通してこの映画ではコミュニケーションによる人との関わり、その難しさと愛おしさ、そして人生の儚さとその中に確かに存在する温かさというのが描かれる。日々の中で孤独を感じてしまうってな人にはとくに響くものがあるんじゃないかな。どの生き方を肯定するでもなく、しかしきっぱり否定をすることもないのに、映画の設定に主人公の人物像も上手く重なって、共感できる部分は非常に多くなってる気がする。彼が劇中で行うスピーチなんかも妙に納得させられるものだったり。ジョージ・クルーニーの繊細なのにどこかコミカルな演技がまた素敵で、心境の変化や感情の揺れ動く様が印象的。新人として入社してくるアナ・ケンドリック演じるナタリーの存在もこのストーリーに於いては大きい。がっつりヒューマンドラマだけど、わりと気軽に見れるのは映画の作風に加えてこの二人の持つ雰囲気によるものなのかな、なんて思ったり。どうでもいいけどJ・K・シモンズはたとえ一瞬の出演でもしっかりくせ者感を残していくよね。

何が正しいかという答えは見終わっても恐らく出ないけど、人生について考えたくなった時に見たくなる、そしてこれからの人生に対しての気持ちを切り替えてくれる、そんな名作。
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