前方後円墳

内なる傷痕の前方後円墳のレビュー・感想・評価

内なる傷痕(1970年製作の映画)
4.0
女(ニコ)の心の世界を描く映像詩。
そこで感じたことは、心象風景。冷たく、壊れそうな、まっさらな景色。白痴のような映像。そこにある無邪気な罪。聞こえてくる歌声は最後の慰め。
前衛的とも言えるこの手の作品には解釈だけでなく、感想を言語にする必要もないと感じることがある。荒涼とした心象風景を静かな彼女の歩みによって描かれ、そこには彼女の苦悩とともに出会った者たちとの心の揺れが描かれているようだ。出会いと別れの中で喜びと悲しみ、そして解放と苦しみがないまぜに入れ替わっているようなニコの表情と動き、そして語りが印象的だ。
白く広い空間の中で時折、鮮烈なイメージを植え付けてくる赤がある。服であったり、炎であったりだ。ドラマのない映像の起伏の中で60分間、感覚的にどれだけその繊細な世界に入り込むことができればいい。