福福吉吉

スターリングラードの福福吉吉のレビュー・感想・評価

スターリングラード(2000年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
1942年、ソ連軍の兵士のヴァシリはドイツ軍の侵攻で陥落寸前のスターリングラードに居た。命からがら生き延びたヴァシリは政治将校のダニロフに出会う。ヴァシリはダニロフから銃を借りて、複数のドイツ兵の狙撃に成功する。ダニロフはヴァシリをソ連共産党の機関紙で英雄として扱うことで軍の士気を向上させる。ヴァシリの狙撃成果はドイツにも伝わり、ヴァシリを殺害すべくケーニッヒ少佐がスターリングラードにやって来る。

◆感想◆
第二次世界大戦中のスターリングラードを舞台に、英雄として祭り上げられた狙撃兵のヴァシリがドイツ軍の狙撃兵のケーニッヒ少佐に狙われ、恐怖の中、生き抜いていく姿を描いています。

ヴァシリ(ジュード・ロウ)は子供の頃、祖父から銃の撃ち方を教わった以外、普通の兵士であり、ソ連軍の兵士を捨て駒のように使う戦場の中で運よく生き残ります。ソ連軍の兵士の扱いがとても酷く、銃を2人に1丁しか与えないのに銃を持っていない兵士も前線に突撃させるシーンは兵士たちがあまりにも可哀そうで仕方がなかった。前面のナチスドイツ、後面のソ連赤軍と地獄しかありませんでした。

ヴァシリは政治将校のダニロフ(ジョセフ・ファインズ)と出会うことで大きく転換点を迎えます。狙撃手の英雄としてヴァシリは祭り上げられ、ヴァシリがあまりにも乖離している英雄の虚像に悩む姿はとても印象的でした。

また、ヴァシリとダニロフは女性兵のターニャ(レイチェル・ワイズ)をめぐって仲が悪くなっていきます。地獄のような戦場でも男女は惹かれ合うなのかなと少し現実味を感じませんでしたが、ストーリーのアクセントをつける意味で良かったと思います。

そして、好敵手のドイツ兵のケーニッヒ少佐(エド・ハリス)とヴァシリの対決が後半に繰り広げられ、これがとても緊張感があって面白かったです。ヴァシリが何度もケーニッヒに勝てないと畏怖する姿が英雄でない等身大の兵士に感じられて良かったです。

ストーリーはテンポが良く、それでいて戦場の過酷さの中でも基地に戻って一日の幸運を喜ぶ姿など緩急が上手くついていて観やすかったです。本作は基本的には兵士視点であり、生き残ることの難しさ、それでも生きる喜びを感じる人の心情などが良く描かれていたように思います。

あくまで兵士目線で戦場を描いていて、とても現実的で魅力のある作品でした。とても面白かったです。

鑑賞日:2024年1月6日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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