ふき

グリーン・ランタンのふきのレビュー・感想・評価

グリーン・ランタン(2011年製作の映画)
2.0
DCコミックスのヒーローの実写映画化作品。

正直、退屈な作品だった。
なにしろ、ヒーローが活躍してスカッとカタルシスを得る場面がなさすぎる。
前半一時間は、主人公が「生活が上手くいかなくてショボーン」「グリーン・ランタンに選ばれるも責任の重さに逃げ出してショボーン」で、ひたすら煮え切らないヒーロー像が映し出されるだけだ。しかもライアン・レイノルズ氏という楽しい役者を使っているのに、主人公の対外的な態度が悪すぎて魅力的に見えないし、ギャグも盛り上がる前に切り上げてしまう。
じゃあ同じDCコミックスのダークナイトシリーズのように、ダークなトーンでまとめているかというと、後半の冒頭で「グリーン・ランタンで人助けをしてアゲアゲ、調子ぶっこいて友人相手にギャグ連発」という、如何にも陽性な活躍場面が出てきてしまう。このシークエンス自体は普通に面白いのだが、前半の「責任の重さに逃げ出してショボーン」の後にやられても、単なる現実逃避にしか見えない。無責任な主人公ゆえの意図的な描き方なのは分かるが、ヒーローが活躍してカタルシスを感じる流れにはなっていないのだ。
しかも盛り上がった後にまた「俺は逃げたんだ」とかウジウジしだすし……。

『バットマン・ビギンズ』も『マン・オブ・スティール』もそうだが、この時期のDCコミックスのヒーロー映画の一作目は、ヒーローがスカッと活躍するシーンまで時間がかかりすぎる。それでもバットマンは、ダークな世界にクリスチャン・ベイル氏の一種ニューロティックな雰囲気がマッチしていたのだが、今作は明らかにミスマッチだ。

では「イメージを物質化する」アイディアが絵的に面白いかというと、それも弾けていかない。人助けシーンはミニカーだったり水だったり面白くなりそうなのだが、メインは戦闘での使用で、それも、壁を作る、銃で撃つ、投石機で敵の攻撃を投げ返すといった“普通”の見せ方だ。残念ながら、「あれはまた見たいな」と思えるシーンはなかった。

いいところが全くなかったわけではない。後に活かされなかったものの、序盤の戦闘機の空戦は中々よかったし、画面に緑と黄と赤が印象的に使われると「おっ」と思った。
個々のアクションシーンも単体ではそれなりに迫力があるので、そういうレベルでは楽しめるだろう。
シーンの順番を調整すれば、もっと映画的に楽しめるヒーローものになりそうなだけに、現状は「もったいない」出来だと思う。
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