うかりシネマ

迷宮物語のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

迷宮物語(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

それぞれ十数分の三作の短編アニメからなるオムニバス映画。

「ラビリンス*ラビリントス」
冒頭とラストに挿入され、残る二篇が入れ子となる。
少女と猫が空想の世界でサーカス=『迷宮物語』を観るというもの。アリス症候群的にデフォルメされた日常は少女の空想を示唆し、迷い込んだ世界は庇護から外れた不安を思わせる。
後半(つまり全体のラスト)はサーカスが終わり日常に戻るのではなく、そのまま空想世界に迎え入れられる。観客が本作から抜け出せないという描写だと思われる。

「走る男」
近未来のカーレースで、マシンも己も燃やしながら偏執的に、ゴールしても走り続ける男を描く。狂った男と壊れゆくマシンの作画が圧巻。

「工事中止命令」
密林の奥地で無人で行われている大規模工事を中止させようとするナンセンスコメディ。ほとんど台詞のなかった前二作と異なり、キャラやストーリーが描かれる。
無人の工事現場でただ一人ロボットに翻弄される主人公はホラー的であるがゆえに馬鹿馬鹿しい。大量の予算を食い日夜資材を密林の巨大河川に捨てるロボットは一刻も止めねばならずシリアスで、止めるすべを持たないさまはくだらない。それをリッチな作画で描き出す。
三作の中で唯一ストーリーがあるので面白く感じた。

「ラビリンス*ラビリントス」前半で無声映画の字幕を入れていることからも、台詞やストーリーを描かないことで作画だけに集中させる狙いがあったのは分かるが、むしろストーリーがない方が画面に集中できなくなっている。難解なのではなく、アプローチが間違っていただけだろう。