イベリー子豚

トムボーイのイベリー子豚のレビュー・感想・評価

トムボーイ(2011年製作の映画)
4.3
これまた凄い思春期あるある映画だった。

とりあえず一言どうしても。

皆さんナチュラルにあまりにも
ネタバレしすぎだと思います。
この映画の魅力はジェンダーへの切り口だけじゃないし、そこはまさに『シックスセンス』のオチレベルの
核心をつく暴露ですよ。



『ぼくの名前はズッキーニ』『燃ゆる女の肖像』の
ヒット&各賞受賞で認知度が上がり
10年前の作品が初上映。

と言っても古くささは全くナシ。
そもそも時代を連想させる描写がほぼなく、
いつ、誰が観ても普遍的な感想が持てる
凄い作りです。
(VAIOでなんとなくそこまで昔の話じゃないかなって思うぐらい)

まず劇場予告が非常に秀逸。
一見、「夏休みの引っ越し+ボーイミーツガールの
淡い少年時代」に思わせ
ママの最後の衝撃の一言で
こっちの意識を180°強制転換、タイトルを再認識させられました。


そして本編!
「この作品の中心のテーマ=核心的なネタバレ」を
1時間弱、観客に全く悟らせないテクニック!
演技と演出の些細な違和感で魅せる
『シックスセンス』マジックです。


予告編を観た人間は「いつこの秘密がバレるのか」。

前情報ゼロで挑んだ人は「何か変な感じだけど
……いったい何が……?」
→「嘘だろ!!!!騙された!!?」となる
二重の仕掛け。

※後者のがより純粋に世界観に浸れそうでオススメ。

本来こういったセンシティブなテーマなら
そこを全面に押し出し過ぎて
下手したら「感動ポルノ呼ばわり」されそうなもの。

この映画はそんな着地ではなく
家族、「きょうだい」、団地の仲間、恋、
見事なバランスで美しく描いてます!
特に笑えるシーンは無いのですが
是枝監督っぽさも感じました。

まずフランスの夏がキレイです。

詳しい説明やモノローグ、BGMすら排除して
この団地のストーリーが各々の
想像に任せられるんですが、こりゃもうフランス版『となりのトトロ』すわ。


次に子役が皆さんお上手すぎるんです!
ちょっとした相手への触れ方だったり
言葉の強さ、口元の歯がゆい感じや、目元がゆるんだり緊張して強ばったり……
特に二人はリアル家族にしか見えないですもん。


そしてクライマックスの秘密の暴露からの流れ、
あれは共感性が高い人間はまともにスクリーン観られないんじゃないかな。

そこからのお母さんの行動。
普段の優しさや二人への接し方で
「強制や否定」の怒りじゃなくて
迫る新学期、本人が心を痛めないようにという
「心配と不安」からきてるものだと
分かるから余計にツラいよね。


前半のほのぼのしたムードからの急降下。
これが脳と心を一番揺さぶるって監督の思うツボ。
だけどちゃんと最後は少しの希望がみえて
なんか少し元気にもなれるような……
とにかくこれまた凄い作品でした。