nt708

トムボーイのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

トムボーイ(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

タイトルが出るところから本作を観賞するにあたり、赤と青が何を象徴するか考えることが大切だと言うことを無意識のうちに自覚させられる。赤いショートパンツ、、青いワンピース、、赤が女性の象徴であり、青が男性の象徴ならば、それぞれの服装は錯綜したミカエル(あるいはロール)のアイデンティティをめぐる葛藤を描いているのだろうか。それ以外でも赤と青が本作のテーマに沿って効果的に使われていたように思う。

それにしても本作のような子どもたちの性自認をめぐる作品を観るととても辛くなる。同じ年代の子どもたちには理解が及ばないことはもちろん、大人たちも彼らの苦しみを理解できない、、そのうえ自分の価値観を押し付けるから観ていていたたまれなくなる。本作と同じ題材を扱った『Little Girl』は両親がまだ本人の性自認に対して一定の理解を示していたからよいものの、本作では両親でさえミカエルの苦しみを理解しようとすらしない。彼女は(あるいは彼は)今後、何をよりどころに生きていけばよいのだろうか。

最後の微笑みが希望の光となるという解釈もあるのだろうが、私にはあれが自分のアイデンティティを偽って生きざるを得ない、何とも言えない感情を抱えたときについ出てしまう意味のない微笑みのようにも見えた。これから彼女(あるいは彼)にどのような人生が待っているのか。本作をきっかけとして周りの人々に少しでも寛容な社会ができたらよいものである。
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