ninjiro

つぐないのninjiroのレビュー・感想・評価

つぐない(2007年製作の映画)
4.0
森の緑は夏の陽を浴びて、さざめき光る湖面に争うように、幾重にも細かな光の色々を純白のワンピースに頬に肌に投げ掛ける。
あらゆるものに祝福されながらも、退屈そうに煙草を咥えて佇む君を覚えている。
あの日も、君は美しかった。

この人生の時間を無理やりにでも引き戻したいと思った事は一度や二度じゃない。
あの暑い夏の日に、もう一度だけ戻れたなら。
君の肩越しに見えるものには何の興味もない。
そこからただ君だけを抱きかかえて、遠く知らない場所へと行けたなら。
君と僕と過去には、ほんの僅かな触れ合いしか残されていない。
確かに魂が惹かれあい、触れ合うのを感じた時。
でも、それが永劫に続くとは思っていなかった。
君と僕とがいつしか求め合うようになったのに理由が無いように、
君と僕とが二度と逢えなくなるとしたってそれを恨む謂れはない。
きっと、この筋書き通りの人生だったからこそ、今も君は僕を求めてくれて、僕もまたもう一度君に出逢えたのかもしれない。

もう、終わったことを嘆いたりはしない。
ただ、また君に逢えるその日を夢見るだけだ。

運命が如何に無惨に二人を引き裂いたとしても、二人の想いの行く先が変わらず一つなら、今はそれぞれ歩く孤独な道も、自然とどこかで交わりいつかは一つになるはずだ。

今はまだ遠く離れていても、一緒にまだ見ぬ幸せな日々を想おう。
そうしている間だけ、僕たちは確かに繋がっている。
そこでは何も持たない君と僕が、ただ笑っているだろう。
何故笑っているかは、僕らの未来のために取っておこう。

ダンケルクの海辺の街から、遠く故郷の海岸を望む。
実際に見た事はない、でもよく知っている。
そこを何度夢に見たことか、焦がれたことか。
白い羽目板に青い窓枠、あの海辺のコテージにあと少し。
凛々しい君のことだから、きっと涙なんか見せたりせず、
そっと微笑んで僕を迎えてくれるだろう。

戻ってきたよ。
さあ、僕たちをやり直そう。
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