竜平

嫌われ松子の一生の竜平のレビュー・感想・評価

嫌われ松子の一生(2006年製作の映画)
4.1
幸せを夢見る少女から一変、やがて転落人生を送ることになる女性「川尻松子」の物語を描く。中島哲也による群像劇及びコメディエンターテイメント。

これまた久しぶりの鑑賞。主人公の松子を中谷美紀が超絶熱演してる他、豪華キャストが勢揃いしていてまずここらへん見てるだけでも楽しかったり。演技派のお笑い芸人たちが物語にしっかり溶け込んでるのも良き。続々登場してくるクセあり難ありの人物たち、様々な視点から語られていく松子の過去、壮絶な人生。中島哲也の前作『下妻物語』にもあったようなハイテンション且つ軽快なテンポ感と、超がつくほどポップな世界観で、全体的にはめちゃくちゃコメディ的、なんだけど、内容としてはじつはなかなか悲惨で可哀想。生い立ちやらちょっとした弾みやらで物事があれよあれよという間に良からぬ方向へ、で本人の性格的な重たい部分、いやらしい部分もあるんだけど、思い通りにいかない世の中とか、不意に出会す不運や不幸にやっぱり心が痛む。また、初っ端の木村カエラに始まりBONNIE PINK、AIといったアーティストと共にミュージカル風のシーンが要所要所で入ってくるのもおもしろいところ。じつは出てるスカパラ谷中敦よ。華やかなシーンと、対比的に出てくる悲劇とで、その瞬間瞬間がどれも際立ってる印象。前述したようにコメディ的でありブラックユーモアの様相でも描かれる中で、松子の一生懸命な姿、孤独を嫌ってどうしようもなく愛に溺れてしまうあたりとか見入ってしまうんだよなと。やぶれかぶれな人物を体当たりで演じる中谷美紀がやっぱり素晴らしいの一言、拍手。

松子の人生と共に時代の移り変わりも描かれていて、その都度その年代の流行りやらニュースやら出てくるのも見どころ。また細かい部分が後々繋がったりする構成も見事で、忘れた頃に伏線が回収されてその都度グッときたり、またしても物悲しくなったり、という。世の中には切ないこと歯痒いこと上手くいかないことたくさんあって、人を愛するだの憎むだの人生ってめちゃくちゃ忙しないよなー疲れるよなーと思う反面、でもなんか時々温かいから捨てたもんじゃないよねーとも思う。皮肉りつつ映し出してくれる、まさに人生讃歌。たまに見たくなる秀作。
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