Ryu

ふくろうのRyuのレビュー・感想・評価

ふくろう(2003年製作の映画)
3.5
1980年頃、東北のとある開拓村。住民はみんな出ていき、ユミエとエミコの母娘だけが廃墟と化した家でその日暮らしをしていた。飢えに苦しむ母娘は汚れきった身なりを綺麗にし、売春勧誘の電話をかける。やがてダムの作業員がやってきて…。そして一人、また一人と次々と男がやってくる。

冒頭から汚れきった大竹しのぶと伊藤歩がうめき声をあげながら、家の中を這いつくばる というインパクト大でございます。
母娘の家の中だけという密室劇でして、展開も男がやってきては毒殺して の繰り返し。なんですけど、男たちの死に様が滑稽で笑えます。死ぬ時のうめき声が動物だったり、最期の言葉だったり とシュールな笑いがありました。
役者陣の演技も飽きさせない大きな要因の一つでしょう。大竹しのぶの色っぽい売春婦、娘と楽しく過ごすお母さん、自分たちの境遇に対して怒るおばちゃんなどのカメレオンっぷりがすごかったです。
国によって奪われた弱者たちの凶行になるんですが、この母娘もなんか色んなものが欠如しているような感じで、変に感情入ったりしないので、ホントにコントを見ているような感覚で楽しめました。
テーマはめちゃくちゃシリアスなはずなんだけど、作風はコミカル。このブラックなユーモアがなんともおもしろおかしかったです。
公開当時92歳の新藤兼人監督。この年齢でこんなものを作りあげてしまうなんて、頭の中一体どうなっていたんでしょう。
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