山岡

悲しい色やねんの山岡のネタバレレビュー・内容・結末

悲しい色やねん(1988年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

森田芳光監督の異色のヤクザ映画。

高島忠夫演じる夕張組の組長の息子、仲村トオル(役名もトオル!)が主人公。彼はやくざの息子でありながら銀行に勤め、切った張ったのヤクザ組織を変えようと奮闘する。敵対組織の三池組の組員である高嶋政伸とは学生時代からの友人で密かに友情を育んでいる。それをよく思わない三池組の組長の小林薫やヤクの売人のような汚い商売を行う病院の娘、藤谷美和子の介入により2人の友情が少しずつ崩れていく…。

『の・ようなもの』で落語の世界をアイビールックでポップに表現したように、本作でもヤクザ世界を舞台にしながら80sらしい彩りを加えることでポップな青春映画に仕上げている。

時折インサートされる道頓堀のネオンサイン、それと呼応するかのように映し出される紫と黒の入り混じった作り物のような夜景…ポップでありながら不穏な空気も醸し出しておりこの映画のカラーを決定づけている。

主演の2人も若いながらも存在感たっぷりだったが、個人的には女優たちがかなり目立っていた作品だったように思う。

映画デビュー作となる石田ゆり子は若いのに芯の通った女性をナチュラルに演じており、ストーリーの本筋とは関わらないものの可愛らしい関西弁も含めて強く印象に残った。

『それから』で物静かで可憐な女性を見事に演じた藤谷美和子は超エキセントリックな病院の娘を怪演。小林薫、江波杏子に負けない存在感を放っていた。ラストで仲村トオルに射殺される際、彼女の体から血液ではなくラメのような金箔のようなものが吹き出していたが、それが違和感ないほどにこの狂人の役は見事にハマっていた。

そして森尾由美。彼女も『それから』に出演し端役を務めていたが、今回はカジノのディーラー役。大したセリフは無いが執拗に繰り返される「そ〜れ〜ま〜で〜」というフレーズが頭にこびりついて離れない。

同じ森田監督の青春映画でも『の・ようなもの』『僕達急行』みたいな名作と肩を並べるほどでは無いが、ポップなヤクザ映画というチャレンジはある程度成功していると思うし、ロミオとジュリエット的なオーソドックスなストーリーが核になっているので森田監督作品の中ではわりと見易い方かもしれない。
山岡

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