Punisher田中

イレイザーヘッドのPunisher田中のレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
4.0
そこは狂気渦巻く工業地帯。
印刷工をしているヘンリーは、ガールフレンドであるメアリーから急に妊娠を告白され、妊娠を機にメアリーとの結婚を決意したヘンリー。
ところが、生まれてきた赤ん坊は奇形児で、毎夜毎夜繰り返される耐え難い鳴き声に耐えきれず、メアリーは家を飛び出してしまうのだった。
息子を世話するうちにヘンリーも精神に異常を来すようになっていく....。

かの有名なデヴィッド・リンチのデビュー作。
ストーリーはかなりシンプルだが、ヘンリーの心情描写が特殊であり、作品全体を空気のように漂っている狂気が今作を支離滅裂にさせているように感じた。
昨今かなりよくみる「出来ちゃった婚」の地獄を疑似体験出来るのが今作の面白いところで、息子の不愉快で甲高い鳴き声や、愛しもしていない妻との地獄の結婚生活から来るストレスは見ているこちらもかなり感じられる。
作品内を常に漂っている狂気、時に怒り狂ったような作品にぶつけられている滅茶苦茶な狂気は、制作当時、すでに父親だった今作の監督デヴィッド・リンチが内に秘めていた狂気を今作に昇華していたからこそのものだと感じた。
3分に1回はSAN値チェックが入るし、見ていてとても発狂しそうです。リンチさん、貴方どうしてくれるんですか...。

今作は77年制作でありながらも、カラーではなくモノクロなのはグロすぎるからとのことで、確かにカラーだったら一生頭から離れないトラウマを味わうことになったかもね。
しかし、カラーの奇形児、キャラクター達の衣装や作品全体の色彩はどんな配色をしていたんだろうと気になるところ。
モノクロでも濃淡のバランスがかなり良かったので絶対センスがいい。
親(大人)になる事に大しての反発と中絶をテーマにしながら嫌悪感を感じる気持ち悪い作品にした事で、無闇に子供を作るなというメッセージも孕んでいると感じられた。
果たして、ヘンリーが地獄を生き抜いたのか、天国へ行ったのかはその目で確かめ、考えて欲しい。