レオピン

暗殺者の家のレオピンのレビュー・感想・評価

暗殺者の家(1934年製作の映画)
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オペラ座のラジオ中継。最高潮でのシンバルの音に合わせて。一体練習のために何回ぐらいレコード聞いたんだろう。このコンサート中に事件が起こるというのは数々の作品で取り入れられてきた。最近じゃ『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』だとか。『イーグル・アイ』でもDJカルーソー監督はかなり忠実にこれをやっていた。

このオペラシーンが作品の白眉であるのは間違いないが、あのカルト教団の存在も今日から見ても新しい。要人テロをも辞さないこの暗殺組織は太陽を崇拝するカルト教団を隠れみのにしていた。邦題の暗殺者の家とはこの教団のこと。 

指導者らしき女性が、まだ準備のできていない人はいませんかと、会場から半ば強制的に壇上に上げ催眠術をかける。心を操る犯罪集団というのがまるで「20世紀少年」のともだち教団みたい。あの松金よね子のような教団の女首領みたいな人。裏でマインドコントロールを実践していると思うと怖い。オペラ座での狙撃よりもこちらの方がじわじわ怖いしすごく新鮮だったのでは。

この組織のリーダーのアボットという男。見た目は中川家礼二というよりも与沢翼センセイ。まだ若いのに中年太りで頭にメッシュを入れ顔はとっちゃん坊や 笑顔の下に冷酷さを隠し持つ悪魔のキューピー。演じたピーター・ローレはこの時30歳。

銃撃戦の中でもやたら落ち着いている。最初の警官をやったのが失敗だったなと冷静に分析していた。表面上は紳士ながらボブに一瞬怒りをあらわにしたり。こういうタイプの狂人をトーキー直後の時代に描き出していたというのはさすが。この見事なキャラクターは今見ても悪の存在感が十分堪能できる。

終盤の銃撃戦はかなり長い。今夜は徹夜だなとか言っていた老警官がいきなり撃たれるギャグで始まるが、意外に徹底抗戦を見せる犯人たちに苦戦する。この銃撃戦は1911年1月3日にロンドンで本当に起きた「シドニー・ストリートの包囲戦」がモデルだそうな。

国際犯罪組織の話だがゆるさも忘れてはいない。パパとクライヴのおとぼけコンビっぷり。そしてラストで勝敗を決めたのは、オリンピック級の射撃の腕前を持つママだったというのが一番面白かった。


パパのボブにはレスリー・バンクス 
ママのジルにエドナ・ベスト
娘のベティにノヴァ・ピルビーム
ポマード髪の悪漢ラモンはフランク・ヴォスパー

⇒コンサート会場はロイヤル・アルバート・ホール
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