NM

ウィンターズ・ボーンのNMのレビュー・感想・評価

ウィンターズ・ボーン(2010年製作の映画)
3.3
ウィンターズ・ボーン、冬の骨。

ヒルビリーという、スコットランド系で山地に住む人々の物語。
始めに流れる主題歌「ミズーリワルツ」が非常に象徴的。ミズーリ州歌でもある。ミズーリ音楽はスコットランド民謡がもとで、非常に郷愁を誘う曲調。フォークミュージックの原点となったそう。

ヒルビリーたちは文字通りヒル(山地)に住んでいるので、大規模な農業はできないし、収入も高くない。生活のためみんな軍隊に行くらしい。主人公の学校でも体育館で簡易な軍事訓練が行われている。このリーもいずれ入隊することになるだろう。

リーも毎日ぎりぎりで暮らしている。大事な家畜であるはずの馬を、エサが買えないためにご近所のソーニャにあげてしまう。
母は病気で会話もままならず、幼い兄弟の面倒もみなければいけない。

さらに覚せい剤製造で収監されていた父が保釈中に失踪。このままでは保釈金の担保である家や土地が没収される。
彼女はすぐに父親の行方を探すが、どうやらもうこの世にいないらしい。
ならば今度はその死を警察に証明せねばならない。骨でもいいから見つけねば。

しかしなぜか訪ねる人みんな非協力的で、捜索をやめさせようとする。何やらこの地域の人々は何かを隠しているらしい……。

ヒルビリーたちはみな銃を携帯しているそう。警察を信用していない様子。
リーは気丈で、口数が少なく表情も殆ど変えない。この地域の人々はみなそう。しかしリーの目には力強さがみなぎっている。リーは何としてもこの家族の生活を守りたい。
しかし、苦しくてもあまり人に頼らない。物乞いするよりは死を選ぶような性格。そんな性格を知っているご近所さんソーニャは、本当に困ったときだけ手を差し伸べてくれる。リーは笑顔も返さずお礼も殆ど言わないが、ソーニャは気にしていない。

この地域で、暗黙のうちに覚せい剤の製造が行われていたのは事実らしい。詳細は書かないが比較的簡単に作れるという。他に仕事らしい仕事がないため広まったか。

サスペンスのジャンルにされてもいるがとても静かで抑制的な演出で、いたずらに恐怖心を煽ったり、やたらに感情を揺さぶったりしない。
ラストも静かに終わり、穏やかな雰囲気の中でこの話が終わったのだと分かる。みなまで言わなくても分かるよね、という観客への丁寧な態度。

始まりも途中も最後も、どきりとするようなシーンは少なめで、この人たちのリアルな物語を観ている感覚をもてる。
渋い。大人向け。

屠殺のシーンがあるので苦手な人は注意。

メモ 楽曲一覧
The Missouri waltz (歌はMarideth Sisco。ミズーリ州生まれ。)
High on a mountain (歌 Marideth Sisco。誕生会1曲目。)
Come all ye fair and tender ladies(またはTiny Sparrow や Little Sparrowとも。誕生会2曲目歌はMarideth Sisco。)
Farther along(エンディング。歌はMarideth Sisco)
On a hill lone and grey
In the palm of his hand
Out of sight
Missing you
I saw your cross
Blueline murders
In memory of the four winds
Freee jacques
Wrong
NM

NM