ベべべっち

ペルシャ猫を誰も知らないのベべべっちのレビュー・感想・評価

ペルシャ猫を誰も知らない(2009年製作の映画)
4.0
”ここでは自由な音楽ができない”

映画もダメなんだったら音楽もまた然り。

冷静に考えればわかりそうなことだったのに全然気づいてなかった💦
自由な映画を作るのが困難な国イラン。
肩身の狭い思いをしているのは映画関係者だけでなく、音楽家たちも同様。

もはや調べるのがめんどくさいレベルなので、細かいところは置いといて…
とりあえず、ちょっとしたことで逮捕される。無許可で演奏したらアウトとか。
逮捕と保釈を繰り返しながら活動を続けているミュージシャンも多いんだとか😵

今作は、恋人同士のミュージシャンの二人が主人公。
演奏許可が下りないイランのテヘランを離れ、ロンドンで歌うことを夢見る。
なんとしてもロンドンに行きたい二人は欠けてしまったバンドメンバーを集めつつ、違法にパスポートやビザを入手しようする。
その奮闘する姿が終始描かれる作品。

・出演者のミュージシャンのほとんどは本物
・主演の二人の実話に基づく
・撮影後の数時間後に主演の二人はイランから離れる
・無許可での撮影を敢行した監督も本作を最後にイランをあとにする
(※公式サイトより)

今はどうなってるのか知らないけど、ホントにぶっ飛んだ国イラン。
こちらでは普通に見かける音楽映画も、ここまでしないと作れない。
今作で登場するミュージシャンが、まるで脱獄した囚人ぐらいにコソコソしながら活動しているのにはびっくり。

ただ、そんな中でも監督とミュージシャンたちがほぼ命懸けで撮影した音楽シーンは迫力があり見応え抜群。
こっちが知らないだけで、イランにもロックだけでなく、ヘヴィメタやラップなども普通に存在していて、そのクウォリティーもめちゃくちゃ高い。
イラン映画では初めてお目にかかるアンダーグラウンド音楽のオンパレードに不思議な気持ちになった。

一方で、音楽ではテンションが上がるけど、作品内容はなかなかにシビア。
そこで終わるのかという読めないオチもあり、どこまでが実話に基づいているのか分からないけど、イランの知らなかった側面がまた垣間見えた気がした。

タイトルのペルシャ猫が意味しているのは、かつて「ペルシャ」と呼ばれたイランのことと、イラン当局の目を逃れながら密かに音楽活動を続ける若者たちのことを掛けているらしい。
(※公式サイトより)

バフマン・ゴバディ監督…演者として出演している作品を観た時は小柄で優しそうなおっちゃんというイメージだったのに、こんな力強い作品を作るとは思わなかった。
前から欲しいけど高いから躊躇っていたゴバディ監督の他作品をもう買おうかなぁ…。

そして、今作を観てふと思ったかのが、イランって優秀な人材が国外に大量に流出してるんじゃないの?ということ。実際どうなんだろ…。