荒野の狼

ゴジラ対ヘドラの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
4.0
1971年公開の85分の展開が早く飽きさせない映画。舞台は駿河湾のある静岡県富士市で、当時は、田子の浦港ヘドロ公害と製紙工場由来で発生した気管支喘息(富士喘息)が社会問題であった。公害反対に対する強いメッセージは、映画の冒頭の主題歌から鮮明。主人公は少年であり、ゴジラが飛行するなどのサービスもあって、ゴジラ映画の本来の対象である子供達が楽しめる内容。一方、扱っている問題が公害で、今日に至るまで形は変わっても環境汚染は続いており、また、皮肉の効いたアニメーションが挿入されるなど成人の鑑賞にも十分な内容。特撮ヒーローファンには、1971-1972年のTVシリーズ「シルバー仮面」で主役を演じた柴俊夫の出演は嬉しい。
ゴジラの敵役のヘドラは、成長するにつれ形態や能力を変えていくのだが、その説明が映画では巧みにされている。鉄骨を腐食させ、人間を白骨化させるヘドラだが、飲み込んだ子猫を殺さなかったり、最大に巨大化したときに、やや腰をくねらせるように立つ姿勢は、科を作る古舞踊の女性のようでもあり怪しい魅力がある。
ゴジラとヘドラは、戦闘中もしばしば会話をするような仕草をみせ、ゴジラは二度ほど公害に怒っているかのような鋭い目つきになっている(ヘドラを一度目に灰にした時と自衛隊を睨みつける最終盤)。水爆実験で生まれたゴジラと公害から生まれたヘドラは人類に警鐘を与える兄弟のような関係であり、ヘドラではなく人間に怒りの視線を投げるゴジラと考えると納得できるシーンである。
本作には富士山が頻繁に登場し、桜エビがヘドロで不漁になったりと地方色がある点も魅力。ひとつ残念なのは、ゴジラとヘドラが富士山麓で対決していながら、富士山をバックにしたゴジラのシーンがないこと。日本を代表するゴジラと富士山をひとつの画面で見られれば、それだけで感動的なものとなったと考えると惜しい。
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