Kachi

シンドラーのリストのKachiのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
5.0
ウクライナ戦争が続く今、改めて。

インバウンド需要が高まり、見渡す限り外国人がいる平和な京都の街にいると、つい今もなお戦争が続いているという事実を忘れてしまう。

スピルバーグ監督作品の中でも、本作は重厚感の面では群を抜いている。実際、気が滅入りそうなシーンが続く中、亡友ロビン・ウィリアムズと電話をして精神を保っていたらしい。
今回三度目の鑑賞だったが、一度目に観た時の言葉にならない感覚は変わらなかった。それに、途中何度か鑑賞を中断せざるを得なかった。それほどまでに、人が尊厳を奪われるとはどういうことか、戦争がいかに人を狂気に変えるかということを、圧倒的な説得力を持って伝えてくる作品だからだ。

・戦争の渦中にいる人が、自分の意思に反して戦争に加担せざるを得ない状況に置かれた時に、それでも「善」を尽くせるか?
・自分の生死を危うくするほどのリスクをとって、他者を守ることはできるか?
・自分が感謝されている最中、もっと努力できたと悔いることはできるか?

働き始めて、しばらくしてから改めて本作を観たことで、組織の進む方向と個人の想いとのギャップに苦しむことの意味をようやく噛み締められるようになった気がする。そういった意味でも、本作でシンドラーが見せたギリギリの選択は、多くの人類が知っておくべきであるし、この優れた善行を人口に膾炙させた本作の意義は大変大きいということを再確認させられた。
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