Gan

シンドラーのリストのGanのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
4.3
ドイツでは、民放にてCMによる中断無しで流す、唯一の映画だという。

序盤から中盤にかけて、特にゲットー解体のシーン(病院での遺体損壊、親子の惨殺、隠れているユダヤ人への一斉射撃など、キリがない)は胸が詰まる。迫り来るナチ党の足音に、観ているこちらの呼吸も浅くなる。
カラー映像でないことに感謝する。

映像の世紀 第5集 "世界は地獄を見た" で描かれた惨劇を思い出す。裸体の人間をブルドーザーでゴミのようにかき集め、焼却炉へ機械的に放り込んでいく、あの実際の光景。
シンドラーが最後に言い放つ「もう1人救えたかもしれないのに」における象徴として、あの赤い服の少女が描かれたのではないか等、併せて思いを馳せる。

アウシュヴィッツでの撮影は許可が下りず不可能だったらしいが、スピルバーグ謂わく「なぜか現地でカメラが作動しなかった」とのこと。

本作(実話に基づく)で救われた命は1000余名だが、600万人を超えるユダヤ人が虐殺されている。
たった80年前の話。
やがてシオニズムは熱を帯び、現在のパレスチナ問題、延いてはガザ地区の惨禍へ繋がっていく。そのプロセスにおける重要なターニングポイントに、確実にホロコーストは位置する。

知恵と想像力を働かせば、もう二度と起こらないなんて、誰が断言できるのだろうか。
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