青山祐介

テンペストの青山祐介のレビュー・感想・評価

テンペスト(2010年製作の映画)
2.5
『この奇妙な<道徳劇>は、いったいどんな意味をもっているのか。』ヤン・コット「シェイクスピアはわれらの同時代人」1964年
テンペストは陰謀と復讐、ゆるしと再生の物語です。寓話的スペクタルであり、史劇であり、道徳劇であり、夏の夜の夢からつづく喜劇でもあります。単独の最後の作品といわれ、その詩的言語の音楽性は他の戯曲のなかでもとくにすぐれたものと言われています。演出家ならば一度は自分のテンペストを、舞台上に創りあげたいと思うはずです。
テイモアはプロスペローを女性にいたしました。はたしてそれが成功したのかどうか?…なんとも言えません。
また、映画ではエリザベス朝式仮面劇の場面が省略されています。(第4幕第1場)これもプロスペローを女性にしたことによるのかもしれません。
終幕にみせるヘレン・ミレンの哀しげな表情、忘れることのできない場面です。
かくして物語は次のような謎めいた台詞で幕を閉じます。
『もはや私には、使おうにも妖精はおらず、魔法をかけようにも術はない。祈りによって救われないかぎり、私の幕切れに待ち受けるのは絶望のみ』5幕第1場 エピローグ
青山祐介

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