青山祐介

ざくろの色の青山祐介のレビュー・感想・評価

ざくろの色(1971年製作の映画)
4.5
セルゲイ・パラジャーノフ「ザクロの色(SAYAT NOVA –The Colour of Poemegranates)」
―Parajanov ‘s cut, 1969年 ソ連・アルメンフィルム、アルメニア語、グルジア語
監督:セルゲイ・パラジャーノフ(Sergei Parajanov)
出演:ソフィコ・チアウレリ(Sofiko Chiaureli)

― 吟遊詩人サヤト=ノヴァは1712年グルジアのチフリス(トビリシ)で生まれた。グルジア(イラクリⅡ世)の宮廷詩人となるが、アンナ王妃との悲恋によって、アルメニアのキリスト教修道院ハフパットに追放される。アルメニア語、グルジア語、アゼルバイジャン語で詠う甘く官能的な詩は一世を風靡し、アルメニア最高の詩人といわれた。1795年、トビリシがイランの侵略をうけたときに、ザクロの実が踏みつけられ、赤い血となって、死を染めるように、サヤト=ノヴァは惨殺された。
― パラジャーノフは1924年グルジアの首都トビリシで生まれる。両親はアルメニア人。形式主義者、ウクライナ民族主義者、思想的逸脱者といわれ、1973年の同性愛の嫌疑で投獄された後、危険な思想の持ち主としてソ連当局の度重なる弾圧をうけ、繰り返し拘禁された。1990年、はかり知れぬその先へと旅立つ。

サヤト=ノヴァの言葉が特別であるように、
パラジャーノフの映像は特別だ。
すべての者が読めるわけではなく、
すべての者が理解できるわけではない。
少数民族のキリスト教は特別のものだ。
サヤト=ノヴァは、魂の書物を読み詠う。
色彩と香りが祈りの言葉となって、
この世界に響きわたる。読めない者たちの魂を満たすために…

パラジャーノフはサヤト=ノヴァの生まれ変わり、
前世の吟遊詩人は、現世の映像詩人としてトビリシに甦った。
色彩はサヤト=ノヴァの魂の織物、
言葉は祈りであり、映像は色彩と象徴にあふれている。
色彩は苦悩の貌、それこそがサヤト=ノヴァの生を綾なす糸だ。
天から与えられた癒しがたい悲しみを言葉にして地に蒔く、
無償の愛は得られるのだろうか?
愛は激しい炎を纏う、死をも燃えつくすために…
青山祐介

青山祐介