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羊たちの沈黙のinazumaのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.2
サイコホラーの金字塔をやっと鑑賞🐏

自分の中で今まで一番怖かった映画世界のサイコキラーは『ノーカントリー』のアントン・シガーでしたが、このたびレクター博士が見事優勝しました。あんな聡明で紳士的で威厳ある医者なのに、ご趣味が人食いとは!頭脳派でもあり武闘派でもある!ギャップ萌えのかたまりのような素晴らしいヴィランでした!アンソニー・ホプキンスの顔面と佇まいがなければ実現できなかったでしょう。

タイトルの「羊たちの沈黙」について、ウィキペディアに"クラリスがトラウマを乗り越えたから"的なことが書いてましたが、こうやって明確な答えっぽいものを提示しないでほしい!笑
…どっちかというとクラリスという人間を形成したトラウマまでもがレクター博士に操作された結果、クラリスの中で羊たちの鳴き声はもう聞こえなくなり、彼女がレクターのものになったか、もしくはレクター側の人間になってしまったように見えます。「レクターはこの資料に答えがあると言ったの」と同僚とともにバッファロー・ビル事件の真相に迫る場面でみせるクラリスの嬉々とした表情は完全にレクターの虜になってしまったようにも見えました。構成が似ている白石和彌の『凶悪』にもあったガラス越し演出がまたそれを示してました。殺人鬼と主人公がガラスを挟んで対話するとき、ガラスに映った殺人鬼と主人公が重ね合わせられる演出は善悪の境目をうやむやにする素晴らしい恐怖演出でした。

透明感が半端ないジョディ・フォスターの美しさには感服。『タクシー・ドライバー』のときも相当可愛かったですが、今回は顔アップも多かったこともあってか印象でいうとクラリスこそ至高。23年後には『エリジウム』で極悪ババア(褒めてます)をやることになるとは。。
時の流れは恐ろしい。

『ストップ・メイキング・センス』で超興奮させてくれたジョナサン・デミの代表作をようやく観ることができて満足。他のデミ映画もチェックしなければ。
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