dm10forever

クローバーフィールド/HAKAISHAのdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.8
【カメラは止まるな!】

ずっとJ.J.エイブラムス監督作品だとばっかり思ってたよ。
でも、改めて監督名を見ると「マット・リーヴス」。
(あれ?)
・・・よくよく考えたら、J.J.はプロデューサーという立場だったのね。嗚呼、勘違い。
っていうところからの再レビューです。
(鑑賞自体は相当前です)

これが公開するにあたって、当時「めざましテレビ」なんかでも結構煽っていたような記憶があるな~。
『海外から信じられない映像が届きました!』てな感じで、フェイクニュースにちょっと乗っかってみて。

それまでの「フェイクドキュメント」「モキュメンタリー」系の作品って、どちらかというと「ありそでなさそで」っていうスレスレの境界線にあるようなテーマを題材にすることが結構多かったと思う。
「ブレアウィッチ」もそうだし「心霊系の投稿作品を集めた(っていうテイの)作品」なんかもそう。
ようは最初から「あり得ない」という世界観から始めてしまうと、リアルを感じられなくなってしまって逆に寒くなってしまうんですね。
だから「ぎりぎり現実に近いところ」っていう距離感を保たないと「(フェイク)ドキュメント」として成立しなくなってしまう。

そういった意味では、今作は普通に考えたら「ありえね~」側の設定ではあるんですよね。
だって「KAIJU(怪獣)」だもん。

でも、そういう「荒唐無稽」な出来事の中にわけがわからないまま投げ込まれてしまうスピード感や、臨場感のある映像で可能な限り表現していたと思う。

もともとフェイクドキュメンタリー系の作品は結構好きでよく観るんですが、これは「おバカ」を承知で徹底的に世界観を作りきったもん勝ちなんですよね。
撮っている側が「なんちゃって、てへぺろ(古っ)。」っていうスタンスのままやってしまうと、やっぱりそれは観ている側にも伝わってくるし、そこに気がついてしまうとこっちは一気に冷めてしまう。

そして辿り着くのが「川口浩探検隊」なんです(唐突)。
え?知らない?うそ。

1980年代に日本でも真面目にバカを突き詰めた素晴らしいフェイクドキュメンタリー作品が、堂々と「週の真ん中水曜日」のゴールデンタイムに2時間ぶち抜きで放送されていたんですよ。
今の地上波TVの風潮やコンプラからすれば正気の沙汰ではないような番組ですけど(笑)。

彼らはブラウン管の向こう側で、本気で「猿人バーゴン」や「怪鳥ギャロン」「恐竜魚ガーギラス」を探して大冒険していたんです。
そして視聴者はそれを「エンタメ」と理解した上で、そのフェイクのリアリティにワクワクドキドキしながら毎回楽しみに観ていたんですね。

フェイクドキュメントというカテゴリーを「ありえねぇ」と切り捨ててしまうのは観た人の受け取り方なので仕方のない事ですが、極論を言えば、世の中は自分自身が体験したこと以外は「ありえねぇ事だらけ」だと思うんです。
それはもう「信じるか、信じないか」の世界かもしれない。

だからこそ、その「ありえねぇ」に本気でリアリティを持たせようとする少年のようなイタズラ心は嫌いじゃないし、実はキチンとした考証を行わないとリアリティが生まれないという点でも、そういう意外と真面目な一面を持った製作陣が作る「真っ直ぐなB級映画」っていうのって、なんかいいよね。

で、この作品にもそういう「カルト映画」のようなテイストを感じるんですよね。
設定も造りも構成も演者も、いい意味で「B級」。
こういう作品を本気で作るっていう気概が嫌いじゃない。
言ってしまえば「パシフィック・リム」が優等生に感じるくらいのB級感すら漂う。

最初から「A級(・・・っていうかB級の反対ってA級なの?)」を気取らず、「BにはBの良さがある」っていう立ち位置を忘れないためにも、こういう映画って必要なんだと思うな。

どうやら、この作品の正式な続編も始動している模様。
今回は「ファウンド・フッテージ(発見された映像物)」という方法ではないらしいので、絵的にはもう少し観やすくなるかもね。
ん~~楽しみ。
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