YasujiOshiba

アンタッチャブルのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

アンタッチャブル(1987年製作の映画)
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何年ぶりかに再見。

 それにしてもデ・ニーロの演じたアル・カポネがさ、子飼いの記者たちに囲まれて、意気揚々と話すのを見ていると、その自信たっぷりで憎々しげな喋り方と、人差し指をたてるジェスチャーに、どうしてたって、あの人を思い出してしまう。そう、ほかならぬドナルド・トランプ大統領そっくりなんだよね。もちろんデ・ニーロが真似をしたんじゃなくて、真似をしたならトランプさんのほう。デ・ニーロはその演技で、未来のポピュリストを予言していたってことなんだろうな。

 まあ、この映画でもポピュリスト野郎を倒すのは、経験豊富だが頑固一徹のアイリッシュ親父のコネリーと、イタリア系であることを隠しながらイタ公と呼ばれると激高する射撃の達人のガルシア。ようするに移民たちが、アメリカの法を守る最前線に立つわけ。まあ、法といっても禁酒法なんだけどね。たとえ高貴な実験であれ、そんなの誰も守りたくない。もちろんアイリッシュのコネリーなんか、部屋にウイスキーを隠し持ってたりする。本音では禁酒法なんてくそくらえと思ってる。けれども汚職はもっといやなんだよな。

 けっきょく金を受け取ってしまえば、ポピュリストのアルカポネの思うがまま。一度でも接待されちまうと、何を言われても嫌とはいえないくなってゆく。金と暴力がすべての世界に、何を持って否と言うか。けっきょく、内側にいるやつらは腐ってしまう。外から理想をかかげて到来する者に、正義を託すしかない。

 そんな1920年代を描くデ・パルマの様式美が軽やかでよい。モリコーネの音楽もまた様式的。ところどころ聞いたことあるなと思っちゃうのは、たぶん『ニュー・シネマ・パラダイス』あたりで、メロディーを使いまわしちゃったから。でも、そうしたくなるほどストレートなメロディ。そしてデ・パルマのストレートな演出。良いやつも、悪いやつも、だれもがみんな様式的。カメラワークだって、軽い軽い。ぼうとうの髭剃りシーンの俯瞰のカットなんて、この映画が目指すところをすべて告知している。

 そんな、軽やかだけれど、しっかりと作り込まれた様式美があるからこそ、この映画、今見ても十分に楽しめるし、予言的ですらあるのではなかろうか。
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