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カスパー・ハウザーの謎のSPNminacoのレビュー・感想・評価

カスパー・ハウザーの謎(1974年製作の映画)
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生まれてからずっと地下牢に閉じ込められていた男が、初めて世界を知る。全くのゼロ、真っ新な状態のカスパー・ハウザーが身につけていく「知識」は、人間社会の写し鏡。言葉とは?生き物とは?子供、大人、男女の役割とは?音楽や物語とは?神や物理科学とは?映画は予め常識とされる事象を一つ一つ、無垢な視点で検証していくことになる。彼に与える知識は正しいのか?実はただ都合のいい思い込みでは?初めしか知らない物語、砂漠のキャラバン、定義できず記録できない想像力が知識より広いヴィジョンを示すかのよう。
何とも長閑なような鷹揚なようなドイツの村人たち、動物みたいに畝る草原、まるで本当にその時代を見るような生々しさがある。ヘルツォークの風景描写は禍々しいくらいだ。多くの矛盾を突き、絶望し、解放されるまで、殆ど固まった表情のままのブル-ノ・Sがこの世の不条理を全身で受け止めている。
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