KSat

炎のアンダルシアのKSatのレビュー・感想・評価

炎のアンダルシア(1997年製作の映画)
2.4
ユーセフ・シャヒーンの映画は短編を2本しか観てなかったけど、今回、初めて長編を観た。ハズレでした。

12世紀のアンダルシアを支配していたムワッヒド朝において活躍した哲学者アヴェロエスことイブン・ルシュドが、過激化していくイスラム教原理主義勢力によって弾圧される様を描いた、2時間強の大作娯楽活劇。

そう、こんな内容だけど、これは娯楽活劇。歌って踊るミュージカルのような空気が全編を覆う。

ユーセフ・シャヒーンは、90年代において過激化してゆくイスラム原理主義勢力や、イスラム圏からの移民に対する西欧社会の排斥運動のようなものが、実は形や立場を逆転させながら中世から繰り返されていることを示したかったのだろう。それが証拠にこの映画の冒頭では、アンダルシアではなくラングドックにおけるイスラム教徒の火刑がまず示されるのだ。

また、これは弾圧の中で人類がいかにして知性を守り、受け継がれてきた書物を守り継いだかについての物語でもあり、この点については感動的ですらある。ここでわかるのは、中世においていかにイスラム圏が先進的で発展していたかということ。そして、それが衰退したのが宗教のせいであることは、今日の有様を見れば火を見るより明らかだ。

だが、映画としては死ぬほど退屈なのが最大のネック。延々とテレビドラマのようなノリだし、急にズームしたり急に派手な音楽を流したりと、ダサダサ演出がヤバい。あと、マジで中世イスラム圏における歴史的な知識がないと、ついて行くのがかなりキツい。
KSat

KSat