shibamike

キッドのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

キッド(1921年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

小さな子どもは全身全霊で親に愛情をぶつける。
それを無理矢理引き離す残酷さ。
残酷に引き離したのを元に戻す安堵感。
終わり方が凄い映画だと思った。


貧しいであらう若き女性が毛布にくるんだ赤ん坊を金持ちの自動車へ置き去るところから映画は始まる。赤ん坊には1通の手紙が添えられた。
"この子をどうかよろしくお願いします"

数奇な人生を巡る赤ん坊キッドの最初の親との離別。
赤ん坊はその後、我々の愛すべき浮浪者チャップリンによって拾われ、育てられることになる。1度失った親を浮浪者とは言え再び手に入れた赤ん坊キッド。
我々の浮浪者は最初、何とかだうにかして意地でも是が非でも命を掛けて赤ん坊を捨て去ろうとするのであるが、NHK教育テレビ ピタゴラスイッチの如く舞い戻ってくる赤ん坊キッドに根負け。
根負けして赤ん坊に名前を付けた。"ジョン"。

5年が経過し、成長したジョン。
我々の浮浪者のことをすっかり父親と思って懐き、仕事の手伝い(ジョンが民家の窓に石を投げて割り、我々の浮浪者がその家の窓を修理するという連携プレー)や家事の手伝い(死ぬほど美味さうなパンケーキ!食べたい!)までこなす。
すげえ5歳児。

すっかり仲良しの父子に最大のピンチが訪れる。孤児院がジョンを引きとると言い、ジョンを無理矢理連れ去ってしまう。息子を連れていかせまいと、係員に必死で刃向かう父ャップリンにも涙が出たけど、ジョンの泣き叫ぶ顔は観ていて本当に辛かった。「嫌がっとるんやから、もう一緒におらせてあげたらええんちゃうのっ!(鼻水号泣)」てな具合に、新年早々池袋にておびただしい数の暇なおっさんとおばはんが荒れた。一体、当時だういう演技指導をジョンにしたのか。凄い泣き顔だった。

何とか孤児院のピンチは切り抜けるものの、最終的にいかんともしがたい事態となる。実母の登場。1度は貧しさから息子を捨てた実母であったが、あれから女優業で大成功を収めていたのであった。
例の"この子をよろしく~"の置き手紙をきっかけにジョンが実の息子と悟る実母。ジョンは実母の元に渡るのであるが、最後に自分がビックリしたのは、実母の住むお屋敷に父ャップリンが訪れて、玄関からジョンが飛び出て来て、父ャップリンに抱きついて、映画は終わる。
てっきり自分は、ジョンが父ャップリンの方が良い!このおばさん知らない!みたいな感じでごねるのかと思ったけれど、そんな風でもなかった。父ャップリンがいてくれればオーライということだったのか。
結局だうなんのよ!と一瞬ヤキモキしたけど、
我々の浮浪者「うっせえ!チマチマ言ってんじゃねえ!イエローマンキーが!死ねっ!」
と我々の浮浪者から叱咤された気がして、ハッとした。
我々の浮浪者「ジョンが一番幸せとなるやうな結末にするに決まってんだろ?死ねよ、黄色人種。」
ということか…と自分の中で気付き、やはり我々の浮浪者、ただ者じゃないなと感服。

クライマックスには我々の浮浪者のドリームワールドシーンがあり、結構異彩を放つ。観ているだけでも楽しかったけれど、意味含ませて観るのも楽しさう。


夢は捨てたと言わないで
他に道なきふたりなのに

キッズ三毛 心の一句
「我々も かつてはやはり キッズなり」
(季語:キッズ→うるさい→虫→夏)
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