Punisher田中

ZOOのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ZOO(1985年製作の映画)
4.2
動物園で働く動物学者のオズワルド・オリヴァーは兄弟で、お互いの妻を同じ事故で失うのだった。
この事故を機に2人は生について考え、次第に死体が腐敗することについて考えを深めていくのだったが...

気が狂いそうになる115分。
日常と狂気を往復する作品が1番おかしくなりそうになることを身を持って思い知った作品。
狂気に呑まれたいというならばダントツで今作の体験が狂気に満ちた物だろう、ただ節度あるものなのでご安心を。

てっきり教本の様なアート的作品なのだろうな、と身構えてみると、あろうことか作品の方から身を屈めてこちらの方へやって来た。
開始いきなり始まる皮肉的な構図から、美しくも不可思議な世界がサイケな音を響かせ、如何にも娯楽的にテンポ良く始まるオープニング。
普通に面白いぞ...面白いとなんだこれ!たまにウゲッとなる描写や思想を受け取ると、また面白いぞ...の波がやってくる。
魅せ方は非常に大衆的なのに表現や台詞回し、脚本はびっくりするほど人を選ぶ物で、かのアリ・アスターの先人といった所。
さすが、寄稿するほど参考にしているだけはある。
アリ・アスターの作る作品の原型が正にピーター・グリーナウェイ作品ということか。

美しいとしか云い様のないシンメトリーな構図と規則性のあるテンポ達に、狂気的なモチーフやら非人道的な思考が狂気で上書きを始め、次第にはその狂気的な要素が作品をナメクジの様に覆い尽くす。
しかし、この覆った狂気を最後には全否定し、いきなり滑稽に映し出すのがなんとも面白い。
狂信的におもちゃで遊ぶ子供が急に我に帰った様な、そんなラストが僕達を現実へ引き戻す。
狂気では終わらないのが良かった。
デヴィッド・クローネンバーグ、アリ・アスター作品やA24配給作品が好きな方にはかなりオススメ。
僕自身はかなりハマったので、今度は英国式庭園殺人事件でも鑑賞しようかなと考えています!