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スローガンのemilyのレビュー・感想・評価

スローガン(1968年製作の映画)
3.7
CMディレクターのピエールはベニスのCM映画祭でグランプリーを獲得。そこでエヴリーヌという若い女性に出会い、ひとめぼれする。ピエールは既婚者で、妻は妊娠している。浮気は公認のところがあったが、今回は本気らしく、妻に離婚を切り出す。ピエールとエヴリーヌは一緒に暮らし始めるが、喧嘩が絶えない。競艇のイタリア・チャンピオンと出会ったエヴリーヌは出会ったころのような笑顔を振りまいて、恋に落ちる。

軽いタッチで描かれるポップなラブストーリーに斬新なピエールが演出するCMのカットが交差していく。キャッチフレーズと奇抜なアイデアをふんだんに詰め込まれたCMを上手く切り替えることで、現実と幻想の世界の境界線が時折緩んでくるのだ。

ジェーン・バーキンの可愛さと60年代のファッション、カラフルで短いスカートから伸びる足の長さ、レトロポップなインテリアや家具、ベネチアの水路や美しい風景や動きのあるボートレース張りのアクションも見ごたえがある。
車のクラクションがカメレオンになっているなどの、小粋な小物使い、スタイリッシュな仕事場と台所の区切り方で、まるで別空間に居るように見せたり、色のコントラストも目を惹く。白と赤、黒のコントラスト、ブルーのスポーツカー、背景に溶け込むように配置されたカップルのふたり、ポストカードみたいなポップな絵の数々に、不思議な民族音楽的なBGMが寄り添い、独特の空気感をつくりだす。

3回ナレーションとともに繰り返されるヴェネチア映画祭。自分勝手な幸せはなかなか思うように続かない刹那を3回の映画祭を通してみることになる。捨てて捨てられの繰り返し。自分がやったことは必ず、何かの形で自分に返ってくる。でもそんなことにも気が付かず人は過ちを繰り返していくのです。ポップなラブストーリーの中に程よいアクションと、ソフトタッチなストーリー展開は、色彩やレトロポップな雰囲気に酔いしれて、ジェーン・バーキンのキュートさを堪能できる作品。
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