フィリップ=K=ディックの原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』が1968年で、この映画が1982年。
今はヒカリエになった東急文化会館にあった、渋谷パンテオンでなく渋谷東急で招待券で観た。
当時はまだカルトSFとして評価されていたわけでもなく、閑散としていたのを憶えている。
ともかく驚いた。傑作だった。
美しくない近未来の描写は、スタンリー=キューブリック『時計仕掛けのオレンジ』でも登場していたが、この映画はさらに洗練されたセットとビジュアルで、度肝を抜かれた。
そして、ハードボイルド。主人公は賞金稼ぎで、その部屋も探偵ものの定番、家具などがなく殺伐としたもので、これにもしびれた。アラン=ドロンの『サムライ』、そのパロディである『痴漢電車シリーズ』蛍雪次郎(滝田洋二郎監督)の部屋にもつながる。
テーマも深く、感情移入に重きを置いた原作を踏襲しながらも、いろんなことを考えさせられる。
また、レプリカントの過酷で劣悪な労働環境は、原発や、アパレルの海外工場でまさに現代も起きている問題だし、限られた命つまり「寿命」に悩む姿もそのまま人間の姿だ。
など、いつまでも、いろんなことを語れる映画。いくらでもシーンが目に浮かぶ。
やはり(SFに限らなくとも)映画の金字塔だ。