FutosiSaitoさんの映画レビュー・感想・評価

FutosiSaito

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HAPPYEND(2024年製作の映画)

3.2

 音楽がシンセ的でチープな感じで日活ロマンポルノに似ていて、テーマもATG、もしくは大島渚や若松孝二、学生運動に入って過激派になるかということで、つまり懐かしかった。
 青臭さも「あの頃」に似ている。
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ソウルの春(2023年製作の映画)

4.0

 まず、朝鮮戦争という東西の代理戦争である内戦があり、武力を維持したままの韓国の歴史が前提としてある。だから治安を守るべき軍部によるクーデターも可能で、光州事件のような民衆への弾圧も起きる。
 その事
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フォールガイ(2024年製作の映画)

4.0

 ハリウッド版『蒲田行進曲』もしくは、フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』。映画を作る映画だが、スタントマンやボディダブル(身替わり役)に敬意を払った映画。
 そして、もちろんアクションあり、ギ
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密輸 1970(2023年製作の映画)

4.0

 東映の女番長(スケバン)シリーズとか、さらに遡って温泉芸者シリーズとか、『トラック野郎』監督・鈴木則文のノリがある。ただし、主役は海女なのにエロは無し。
 それでも、舞台となる1970年代の音楽は鳴
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.9

 予告だけだと、凡百の「ロマンスもの」をイメージしていた。物語の構成はそんな部分もあるのだが、演出や演技が突出しており、忘れられない作品になった。
 特に、目線。ふれあい、文字通りで強い動作でなく、触
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

 原爆の父という理由だけで、上映反対の雰囲気もあり、日本公開が遅れてしまう。作品を見ていないのに、概要だけで反対する。
 そんな「みんな反対している」人にこそ見てほしい。聴聞会の怒涛のような詰問シーン
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

 引きが多い壮大なスケールの映像だらけ。同じCGに頼ったものでも似通ったアングルが多いなか、これは違う。監督の絵コンテ=イメージが、いかに優れているかということだ。
 一方で顔と表情のアップも多い。そ
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コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

3.8

 ジェイク・ギレンホールは、苦悩の表情がよく似合う。それがそのまま、アフガニスタンとアメリカの苦悩を表している。
 同じ舞台では、『ローン・サバイバー』が現地の人に助けられた米兵を描いていたし、『アウ
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.8

 サンドラ・ヒュラーは、不思議なコメディー『ありがとうトニ・エルドマン』でのイメージがあったので、今作のシリアスな演技に驚いた。幅が広い、すごい女優だ。
 裁判劇でもありサスペンスでもある内容だが、ク
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.8

 ヒットのおかげで大作に取り組めることになったので、好き勝手にやらせてもらったという。それがこんな怪作というところが面白い。この監督が体裁のいいものを撮るはずがない。
 弱気で謝ってばかりの主人公が、
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

 こういう職場なら、病気の説明も症状のことも話さなくても、思いやってもらえる。よけいな「忖度」も過度な遠慮もない環境が、人を変えていく。
 それを淡々と描いているのがよかった。
 そして過剰なドラマの
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.7

 とことんリアルな西部劇というと、『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』のようなものが挙がるが、これはとことん地味で、ゆえにリアルな映画だ。
 貨幣の流通もままならず、街というよりバラックの集合体ができ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

 フィクションは、ノンフィクションより訴求力があることを知らしめる作品。脳を移植された人造人間は、キカイダーにおけるハカイダーのように「記憶」「心」つまり人格ごと新しい体に宿るのだが、これは違う。
 
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

-

 質素な独り暮らしといい、題名といい西川美和監督の『すばらしき世界』に似ている。が、こちらは視点が何よりも違う。
 ヴェンダース監督の見た東京、水路が多くて坂も多い。首都高の立体交差なども、あらためて
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ナポレオン(2023年製作の映画)

3.7

 英雄でありながら、戦争をし続けた指揮官でもあるナポレオンを、終始暗いトーンで描いた。リドリー・スコット監督は史実の職人であり大家だな、もう。
 ホアキン・フェニックスのしかめっ面と微妙に抑えた演技が
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正欲(2023年製作の映画)

3.9

 マイノリティとマジョリティの差は多数派かどうかでしかなく、マイノリティ中のマイノリティもあり、その理解は難しい。だが、そういうことを解るかどうか。残念ながら「普通」しか見ようとしない人が多い。
 磯
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.0

 ゴジラは「災厄」なので、都合よく被害者や被災地を分けはしない。
 その絶望感を、登場した冒頭から見せつけるすさまじさ。特に、熱線の破壊力には目を瞠るものがある。その後のキノコ雲の絶望感!
 空襲を受
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福田村事件(2023年製作の映画)

4.0

 「のび太のくせに」が強くなってしまった現在日本の姿。
 かって戦争で勝った相手であり、占領した相手を低く見る。セクハラを訴えるタレントが韓国だから、(露出度を根拠に)非難する。汚染水(処理水)に抗議
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アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.0

 舞台と、ドラマと、映画の交錯!ちょっとだけ現実?というイメージの爆発が、さすがウェス・アンダーソン監督だ。「映画内舞台内」(メタフィクション)映画とは、驚いた。
 鮮やかすぎて、ちょっと不吉な感じが
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マイ・エレメント(2023年製作の映画)

3.9

 作者を知ることで、さらに作品のテーマが見えてくる。背景を知ることで、感動が増すアニメ。
 予告編や、予備情報ではなぜ、監督の韓国ルーツを宣伝しなかったのか。知れば、韓屋系がアメリカに移民したときに選
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バービー(2023年製作の映画)

4.0

 制約のないフィクションはこうでなくちゃという、すばらしい作品。
 映画はどうせ作り事なんだからと、思いっきり寓話を作り込みつつ、しっかりと現実世界を描いている傑作だった。こんな、はちゃめちゃな世界観
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.4

 王様に「裸」、前よりはつまらないと正直に言えるかどうかという作品。
 スタジオジブリというブランドと、宮崎駿という巨匠なので、深読みしたり、凄いと言ってしまう同調圧力があり、鈴木プロデューサーの「無
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イノセンツ(2021年製作の映画)

3.7

 SFXも豪華スターもいらない、見せる技術さえあれば、という見本のような一本だ。
 大友克洋の原作漫画『童夢』単行本が出たのが、ようやく1983年。この映画の監督は、『AKIRA』より『童夢』こそが映
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.0

 映画監督はじめ表現者・創作者のリーダーとは、権力者にならざるを得ずリスクを負うものである。自分の表現したいことのためには、人を切ったり(解雇したり)、人のことを否定したり、感情的になったり、わがまま>>続きを読む

アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.7

 北欧がアルコール依存の多い地域だとは聞いていたが、これはその実態をコメディにした、ブラックな映画だった。
 楽しそうで、実は怖い。
 コミュニケーションが取りやすくなるとか、リラックス効果とか、何よ
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.6

 天才・鬼才と言われる、『死刑台のエレベーター』を撮ったルイ・マル監督に経歴が似ていると(勝手に)思っている、ダーレン・アロノフスキー監督による『鬼火』にあたる作品。
 孤独な主人公が、亡くなるまでの
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せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.7

 汚穢屋(おわいや)と言っても、「汲み取り屋」で、エコロジーの発想からこのテーマにしたということや、短編のつもりがこれだけの物語になったこと、それが成立して公開されていることが、すばらしい。
 繰り返
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

3.8

 バディものの爽快感に、異形の悲哀を加えたという意味で、シリーズの最後(?)にふさわしい作品だった。ティム・バートンは『シザーハンズ』と『バットマン』でヒーローも、敵のペンギンもいわば「フリークス」で>>続きを読む

オオカミ狩り(2022年製作の映画)

3.9

 『シン・仮面ライダー』では、冒頭の血飛沫(ちしぶき)が話題になっているが、こちらは何の遠慮も躊躇もなく殺戮を繰り返す。
 入れ墨者のイケメンが、楽しむように人を刺したり撃ったりするし、護送役の刑事も
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零落(2023年製作の映画)

3.7

 世をすねて、ヒット作とは世間に媚びる作品だと見ている主人公。
 マンガ編集者の妻とも上手くいかず、自らスランプに陥ってしまう。
 クリエイター、創造者としての苦悩と悲しみを描くものは多々あるが、これ
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

 2019年のアニメ『音楽』が見せていた手法を、さらに進化させ、深化させた。音をいかに映像にするのかはディズニーの『ファンタジア』以来、アニメのテーマでもあったが、これは主に光で表現されていて格好いい>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

3.9

 天才は特殊で困った人物だというキャラ設定はやめてほしい、という天才の発言があった。だが、誰にでも能力には凸凹がある。それが激しいだけだ。
 ということがわかっていても、このキャラクターは面白い。東出
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.9

 ルリ子最高。予告の時からキマった感じだったが、いちいち格好いいし、ツンデレな雰囲気が良い。寡黙で中性的で、庵野監督の巧さが光るキャラクターだ。朝ドラ『らんまん』の明るい浜辺美波を見ていると、ルリ子に>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

4.0

 いやらしいという意味でなく(もちろんその要素もあるが)、こちらの予想をはるかに上回る「変態」な映画だった。
 ファム・ファタル(男を破滅に導く女)のようで、それだけではない。
 冒頭の取り調べシーン
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非常宣言(2020年製作の映画)

4.0

 すべてが面白い、韓国映画の実力をまた見た。
 ほぼ、航空機内という「密室」で起きるパニック。これは『新感染』と同じだが、ここでは国際線なので政治も、外交もテーマとして浮上する。その設定が巧い。
 そ
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神々の山嶺(2021年製作の映画)

3.9

 日本のアニメは背景が微細でリアルという認識だったが、この映画のものはすばらしい。昭和の日本の、街や電柱、電化製品なども詳細に描かれている。
 そして、何よりも山々の光景だ。一枚絵としても完成度が高く
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