slow

フェリーニのアマルコルドのslowのレビュー・感想・評価

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)
4.8
暖かな雪が舞うイタリアの小さな町で、息衝き継承される人々の暮らし。本作は監督が青年の頃に焼き付けた幾つかの記憶とフィクションを織り交ぜた、不思議な半史実映画。

この物語は青年(監督)目線で世界を映し出したもので、そこに起承転結と言ったわかりやすい骨組みは見当たらない。そのかわりと言っていいのかどうか、移り行く季節をそれと捉えながら観るといいのかもしれない。
広場の佇みや自然現象を駆使する辺りはアンゲロプロス。お祭り気質で陽気な人々はクストリッツァ。子供の撮り方なんかは小津的でいいなとも思うのだけど、それよりもかなりマセていたりするのはイタリアのお国柄かな。彼らの作品を観た時に感じたもの。それらが本作にもぎっしりと詰まっていて、まるで贅沢な重箱を開けた時のような特別な感動が次々と視界に飛び込んでくる。うんざりする日常の風景も高揚する非日常の情景も、起こる出来事一つ一つが愛おしくもあり気恥ずかしくもあり、気がつけば120分があっという間に過ぎていた。そして、最後には見事にイタリア映画に着地するというフェリーニの凄さ。そう、フェリーニはやっぱり凄い監督だったと思えたことが、一番嬉しかった。というのは私事。

少年の心に刻まれたある一年の記憶に、何故私たちまで懐かしさを覚えるのだろうか。きっと、『道』でも素晴らしかったニーノ・ロータの魔的な音楽の力と、空間を自在に使って物語を美的に演出し切ったフェリーニのセンスに、この心はどこまでも豊かになり感動せざるを得なかったんだろうと思う。素晴らしい。
slow

slow