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東京ゴッドファーザーズのKuutaのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
3.9
キネカ大森にて「パプリカ」との二本立てを鑑賞。監督のホームページには今作製作の経緯や絵コンテも残されており、監督がどんな事を意識してアニメを作っていたのかがよく分かる。改めて、素晴らしい才能と(オタクっぽくなり過ぎない)バランス感覚を兼ね揃えた人だったんだなと思った。

子を失う親と親を失う子。3人のホームレスが、拾った赤ちゃんを返しにいく。あえてのご都合主義に振り切れたストーリーで、実写だと白ける内容だろうが、写実性と虚構性のバランスが絶妙なのでギリギリのラインで成立している。写実的でリアルな背景の上に、アニメ的に表情を動かすキャラクターたちがいる、今作の条件下でのみ表現できる「リアリティ」だと思う。

クリスマスの落とし子は当然キリストであり、奇跡に従うようにして最後には天使が降りてくる。大晦日を超えて、新年に希望の光が差す。散りばめられたキリスト教イメージに「素晴らしき哉、人生」を連想するが、クリスマスだけでなく除夜の鐘に初詣と、日本の八百万っぷりが楽しめる。「居てもいなくてもいい」白髪白ヒゲの爺さんは、産まれたばかりの清子と対照的にあっさりと死んでいくが、典型的な神様の見た目をしていた。

アクション映画への言及を繰り返し、終盤は本当にアクション映画になる。日常と非日常が境界を失って行ったり来たりする。

過去から逃げている主人公3人。清子との冒険を通して、ミユキは自分を覆い隠した上着を脱いで親子関係への想いを吐露し、父との再会を果たす。パプリカで他者を拒絶して引きこもる“子供”時田を敦子が叱責する展開とも重なる。

親は選べない。親子関係は偶然の産物なのかもしれない。3人もまた、偶然を積み重ねた先で清子の名付け親=ゴッドファーザーとなる。ゴッドファーザーの意味をウィキペディアで見ていたら「ラテン系のカトリック社会では代父母制度は相互扶助を目的とした擬似的な親族を形成する社会制度となっている」とあり、あの暗殺者のくだりはここに繋がっているのかなと思った。

ツッコミ役なおいしいポジションのミユキの表情が豊かでとても良かった。岡本綾のぶっきらぼうな声もハマっていた。78点。
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