ふき

007/ワールド・イズ・ノット・イナフのふきのレビュー・感想・評価

4.0
ピアース・ブロスナン氏は一作目でティモシー・ダルトン氏のボンドからブリッジし、二作目でショーン・コネリー氏にも似たバランスのボンドを演じたが、本作は一周回ってジョージ・レーゼンビー氏にきたのかと思うほどシリアスなトーンに振れている。
特にソフィー・マルソー氏演じるメインのボンドガールの置き方と顛末は、シリーズでも屈指のボンドの冷酷さが見られる場面で、悲しくも印象的。反面テロリストのレナードの描き方が、総大将のようでも用心棒のようでもあるといった、中途半端なところに落ち着いてしまったのは残念なところ。

また本作は、MI6の面々が印象的に描かれていることでも思い出深い。エレベーターを登ってくるRに役割を引き継いで、エレベーターを降りて退場していくQのシーンは秀逸で、演じたデスモンド・リュウェリン氏が本作公開直後に亡くなってしまったことと合わせて忘れられない。
指揮官として表に出てくることが多くなったMも、本作ではもはやボンドガールと一人と言える存在感を発揮している。ロジャー・ムーア氏のシリーズを思わせるオチに対する、ジェラス目線の入ったリアクションも完璧。
ふき

ふき