FutosiSaito

祭りの準備のFutosiSaitoのレビュー・感想・評価

祭りの準備(1975年製作の映画)
4.0
 土着とか、地縁とか、血縁とか、悶々とした青春とか、性に対するあこがれと失望とか、ともかく青い。青臭い。
 主演の江藤潤は、その名も『純』という作品にも主演している。
 その垢抜けなさが、時代に合っていた。
 一方の主役、叔父役の原田芳雄が凄い。ぐーたらで、仕事するより人のものを盗って、昼間っから酒を飲む自由人。
 父親役のハナ肇も、女の家に入り浸りで、すっかり家に寄り付かない。
 シナリオ作家志望の主人公は、そんな田舎をなんとか脱出しようと考えている。
 いやー、「ATG」だ。
 学生時代、池袋文芸坐が「ディレクターカンパニー特集」のオールナイトをしたときに、ATGの『絞死刑』とこの映画も上映し、前者の脚本で田村孟が、後者で中島丈博が舞台挨拶をした。
 田村孟は「インクは血でペンは肉だ」と、中島丈博は「どんな者にも、自分のことで良い物語がひとつは書ける」ということを語っていた。
 主人公と同じセリフだった。
 中島丈博はこんな環境で育ったのか(それがあの伝説の漫画『アストロ球団』に繋がっていくのか)。
 刹那的で破滅的な原田芳雄は、都会へ脱出することもできない。その哀しさも体現していた。ラストシーンの切なさは、彼の感情の切なさでもある。
 追記:『温泉スッポン芸者』の杉本美樹も出ていたのには嬉しくなった。
 絵沢萌子もいるし、原田芳雄はずっと黒木和雄監督の作品に出続けたし、語ることが多すぎ……。
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