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エヴァの匂いのRのレビュー・感想・評価

エヴァの匂い(1962年製作の映画)
4.5
何ちゅーはなしや。おそらく映画史上最も悲惨な男と女が出てくる。まず、主人公のタイヴィアンは作家で、前作が大変に売れ、映画化されたことで富豪になり、映画祭のためにヴェネチアにやって来ている。彼にはフランチェスカという、美人で彼のことをとても愛しているフィアンセがいる。にもかかわらず、彼がヴィネチアで借りている家に、突然雨宿りにやって来た女エヴァに魅了され、どんどん身を滅ぼしていく。タイヴィアンは残念ながら、どこからどう見てもまったく魅力のない最低な男。不細工で傲慢で自分勝手でナルシスティックでマジで気色悪い。一方エヴァはお金と高級ホテルにしか興味のない、人間的深みのない、バカでブチャイクなオバちゃん。なんだけど、妙に格好がついてて男を誘惑することには長けている。この最低な男と最低な女の、どうしようもない、気取っただけの空虚なからみを延々と見せられるというとんでもない内容。どう考えてもストーリーはだるくてアホらしすぎるのに、これを一瞬たりとも退屈させない、驚異的な魅力を満載に演出したジョゼフロージー監督。天才としか言いようがない。まったく感情移入できないまま、隅々まで計算された官能的な映像とカメラワークで酩酊状態に陥れられる快楽、不思議。その圧倒的な演出力が凝縮されてるのが、前半のナイトクラブのシーンでしょう。衝撃的なモンタージュの連続。まさにマジック。ただ、ここでカチッとハマれないとしても、少しずつ少しずつ、マジカルな映像の連続にクラクラしてくること間違いなし。全編をセクシーに彩るジャジーな音楽も、本作の中毒性を増し増しにしている。ほんとにわけわからん。演出力が高すぎると、ストーリーの良し悪しは関係ないんだねー。しかも、直後に2回目見ると、全体の流れがつかみやすく、さらに魅力が輝いて見える。あまりに見事な映像世界の構築に驚嘆せざるを得ない。こんな映画があってよいのでしょうか。よいのでしょう。ジョゼフロージーとは、メフィストーフェレスのような映画監督だと思った。マジ稀有。これまた見たいし、他のも再度見なおしてゆきたい。
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